当事者のリアルな姿を伝える冊子「トランスジェンダーのリアル」発行
クラウドファンディングで資金集め2万部製作、行政や教育機関等へ無償提供
トランスジェンダー当事者とアライによる「トランスジェンダーのリアル」製作委員会は、トランスジェンダー当事者のリアルな姿を伝える冊子「トランスジェンダー のリアル」を2021年9月30日に発行しました。クラウドファンディングで集めた資金を元に、まずは第一弾として2万部を製作し、現在、全国の行政や教育機関、NPOなどに無償提供をはじめています。
冊子製作の背景としてはここ数年、トランスジェンダーに対する誤解や偏見がインターネット空間を中心に以前よりも拡散されやすくなっていることがあります。2018年にお茶の水女子大学がトランスジェンダー女性の受け入れを認めた直後から、特にトランスジェンダー の女性に対して「男体持ち」とことさらに性器のことを持ち出した侮辱や、「女装した性犯罪者の男と見分けがつかない」などの悪意をもって差別を扇動する書き込みが急増しました。現在もSNSには当事者の外見を嘲笑したり、当事者の書き込みを曲解して大量のいやがらせリプライを浴びせたり、といったことが続いています。
LGBTという用語が広く知られるようになったのと並行し、このような状況が進行していることを私たちは憂慮しています。これらの背景には当事者と出会ったことがない、当事者がどのような生活を送っているのかわからない、といった人が多いのではないか、との考えから、当事者のリアルな姿を知らせる冊子の製作を行うことにしました。
冊子は全32ページで、当事者5人のこれまでの人生を振り返った手記と写真、職場・治療・学校といったテーマについての様々な当事者からのコメントやコラム、トイレ利用についての座談会、家族の手記などを扱いました。冊子に写真つきで登場した人たちのライフストーリーに関してメディアで改めて紹介いただいたり、学校や職場でのトランスジェンダーの経験について、またトランスジェンダーの子を持つ親御さんの経験についてなど、この冊子をもとに報じていただける内容となっています。
メディアの皆様には、この冊子を切り口に、ぜひトランスジェンダー当事者の思いや、学校・職場の多様性確保、子育ての際に知っておきたい知識などを、とりあげていただけると幸いです。
※当日取材が可能なイベントがあります
10月17日(日)、足立レインボー映画祭にて、冊子製作を行ったメンバーによるトークイベント「トランスジェンダーのリアル」が開催されます。こちらを取材いただくことも可能です。イベントの詳細:https://sites.google.com/view/adachirainbowfilmfestival/
*なお、個別取材に関しては別途ご相談ください。
冊子製作メンバーの紹介と想い
遠藤まめた:一般社団法人にじーず代表
「トランスジェンダー は人口の1%にも満たない。当事者がどのような生活を送っているのか知らないから現実からかけ離れたイメージを膨らませてしまっている人が多い。まずは当事者が感じていることを知ってほしい」
小野アンリ:ノンバイナリー 36歳 (*冊子に写真と手記掲載)
LGBTQ+の子ども・若者とサポートするおとなをサポートする任意団体 Proud Futures 共同代表。元小学校教員。2012年からLGBTQ+の子ども達もインクルーシブな教育環境を整えるための学校現場との連携や、LGBTQ+の子ども・若者や、そのまわりの大人への相談支援を行ってきた。
「これまでたくさんの子ども達に関わってきた中で、トランスジェンダーやノンバイナリーの子ども達が世の中にあるトランスジェンダー/ノンバイナリーに対する誤解や偏見、嫌悪感のせいでどれほど苦しんでいるのか痛感してきました。「世の中」の中には教職員も、その子の家族や生活の中で自然に接する機会のあるたくさんの人たちも当然含まれています。身近な人たちがトランスジェンダーやノンバイナリーのことを全然知らないだけでなく、誤解や偏見、嫌悪感を持っているために、トランスジェンダーやノンバイナリーの子ども達は日々、自分を大切に思ってくれているはずの身近な人たちからもマイクロアグレッションや直接的な侮辱、様々な暴力にさらされてしまったり、家庭や学校など での居場所を失ってしまったりしています。誤解や偏見を払拭していくことで、トランスジェンダーやノンバイナリーの子ども達の今と未来をより良いものに変えていきたい」
河上りさ:1982年12月22日生まれ 38歳 (*冊子に写真と手記掲載)
トランスジェンダー女性。ボイストレーニングやトランスジェンダー当事者内外に向けた情報発信等を行う。トランスジェンダー当事者が生きるリアルを取材したシリーズ「トランスジェンダーのリアル」を公開中。
「ネット上にあるトランスジェンダー当事者に対する誹謗中傷だけでなく日常においてもトランスジェンダー当事者ではない方からの何気ない言動に傷つ瞬間があると思います。いじれられたり、避けられたりなどもそれに当たると思います。普段トランスジェンダーに関わらない方は特にトランスジェンダーに対するイメージはTVなどで見るような絵に描いたものなのかと思います。その為、トランスジェンダーだからということでタガが外れた対応をしたり、どのように接したら良いのかわからない、だから腫れ物に触るように距離をとってしまったりという人も少なくないと思います。
このような偏ったイメージが無知からくるトランスジェンダー当事者への心ない言動につながるのではないかと考えています。しかし、そのようなイメージとは裏腹にトランスジェンダー当事者には様々な人がいて、決して一括りにはできないということをもっと多くの方に知っていただくことが必要だと思い、移行した後の性別の人間として移行前の性別を周りに明かすことなく世間に溶け込んで生きるいわゆる埋没という生き方をしていたのですが、自らの素性をオープンにして自身を含むトランスジェンダー当事者のリアルを、当事者ではない方に知っていただくための取材や動画やSNSでの発信を行なっていた時に、まめたさんからお声がけいただき、当プロジェクトに参加させていただきました。
私たちトランスジェンダーは、皆さんが思っているような特別変わった存在なんかではなく、皆さんと同じようにどこにでもいる人間なんだということを知ってください。期待を裏切るようで申し訳ないのですが、どこにでもいる一人の人間だということを知る人が増え、偏ったイメージではなく、ちゃんと一人の人間としてトランスジェンダーとそうでない人との関係性を築けるような未来につながる橋となることを願っています」
松尾亜紀子:フェミニスト出版社エトセトラブックス代表、編集者
「トランスジェンダーの友人がいたり、一緒に活動する機会が多い私自身も、制作メンバーの皆さんと打ち合わせをするだけで、学びをどんどん得て、知識をアップデートしています。知人がいてもジェンダーにまつわる個人的な話題に踏み込まない場合の方が多いし、ましてや直接の知り合いがいなければリアルな姿はわかりません。差別に反対し、一緒に生きていきたいし、そして知りたい、というシスはたくさんいます。何より私は今、トランス当事者のみなさんと同じひとつの問題に取り組めることが嬉しいし、楽しい。この経験を冊子を通して、多くのシスジェンダーに伝えたい。」
※このリリースは虹色PRパートナーが配信しています。
■虹色PRパートナーについて
虹色PRパートナーは、特定非営利法人虹色ダイバーシティと株式会社プラップジャパンによる共同プロジェクトです。LGBTなどの性的マイノリティがいきいきと働ける職場づくりのための調査・講演・コンサルティングなどを行う虹色ダイバーシティと、広報・PRの支援・コンサルティング事業を通して社会・文化の発展に寄与するプラップジャパンの強みを生かし、様々な企業や団体の、LGBTなどの性的マイノリティに関連するコミュニケーション上の課題を解決することで、よりよい社会づくりに貢献することを目指します。