ネットゼロカーボンビルで脱炭素社会への貢献をめざす 豪州メルボルンにて最高層の15階建木造オフィス開発事業に参画
この足がかりとなるプロジェクトが豪州メルボルン市近郊コリンウッドで建設する大規模木造オフィスです。地上15階、地下2階のRC・木造混構造(6階超が木造)で、木造オフィスでは豪州メルボルンにおいて最高層※1となる見込みです。今年12月の着工、2023年8月の竣工を予定しています。
また、本プロジェクトでは、構造躯体で約4,000m³の木材を使用し約3,000トン(CO2ベース)の炭素を固定すると試算しています。この固定量を含めると、建物の建築時(建材の原材料調達・製造・建築・解体などの過程)に排出されるCO2(エンボディード・カーボン)は、全構造をRC(鉄筋コンクリート)造とする場合と比較して約4割削減したことと同等の効果があります。
全世界のCO2排出量に占める建設セクターの割合は約38%※2と言われており、脱炭素社会の実現に向けこの削減が喫緊の課題です。WGBC※3はパリ協定の実現に向けた気候変動対策として2030年までに全ての新築の建物でオペレーショナル・カーボンのゼロ化と40%以上のエンボディード・カーボン削減、2050年には全建物でオペレーショナル・カーボンとエンボディード・カーボンをゼロ化する目標を掲げています。
本プロジェクトは炭素固定機能がある木材の有効活用と建物の省エネや創エネ、再エネ利用を組み合わせ、WGBCが2030年に掲げる目標を7年前倒して実現する先進的な開発です。
■エリア及び物件特徴
コリンウッド地区はメルボルン中心部から東に2.5km、路面電車の駅やサイクルレーンも整備されるなど交通利便性が高いことに加え、市民が集う大きな緑地公園に近接、レストランやカフェバーといった商業施設が充実する職住近接を提供できるエリアです。
木材や植物など自然由来の素材を取り入れ、ストレス低減や生産性向上に効果がある※4とされるバイオフィリックデザインを採用。梁や柱を木の現し※5で仕上げ、木の雰囲気やぬくもりを体感できることも特徴です。屋外テラス、徒歩や自転車通勤者の為のロッカールームやシャワールームといった設備も充実させ、良質な職場環境を提供し社員間の連携を強化したい新興企業、環境価値の高い物件への入居を指向する大手企業や政府機関等のニーズを想定しています
■プロジェクトスキームと背景
本プロジェクトは住友林業100%子会社のSumitomo Forestry Australia Pty Ltd.とNTT都市開発100%子会社NTT UD Australia Pty Limited.、Hines社子会社Hines Australia Pty Ltdを通じて実施します。
NTT都市開発と住友林業は、メルボルンでの宅地開発事業や米国テキサス州ダラスで賃貸住宅の共同開発の他、日本国内においてもウエリスコート辻堂東海岸やウエリスパーク四日市南山の手等の共同事業を通じて国内外で強固な関係を構築しています。今回、北米を中心に複数の木造オフィス開発実績を有するHines社と共に、世界各国でオフィスビルを開発・保有するNTT都市開発と、中大規模木造建築事業拡大を加速する住友林業との知見を融合し、環境負荷が低い次世代型オフィスを開発します。
住友林業グループは、新たな収益源の創出とサーキュラーバイオエコノミーシステム※6の構築に向けた取り組みのひとつとして、「ネットゼロカーボンビル」を木造建築で実現、展開していくことを目指しています。豪州では2016 年以降の建築基準法改正で中大規模木造建築が普及・拡大しつつあります。本プロジェクトを契機に環境負荷が低い中大規模木造建築を豪州で推進し、ここで得た知見を日本にも還流して国内の同事業の発展に繋げます。
NTT都市開発は、SDGs「行動の10年」の始動や脱炭素化に向けた社会の動きを踏まえ、経営戦略としての環境経営推進を従来以上に加速するため、2021年7月、経営企画部内に環境経営推進担当を設置し、体制の充実を図りました。本プロジェクトを始めとし、海外においても環境に配慮した事業運営と社会貢献を行うことで、持続可能な社会と企業の成長の実現をめざすとともに、より地球環境に配慮した街づくりに取り組んでまいります。
<Hines社概要>
1957年に設立された非上場のグローバル不動産投資会社で、世界27カ国255都市で事業を展開し、運用資産総額は836億ドル(2021年6月末時点)。また、367件の不動産(総面積:1,285万㎡)で不動産管理サービスを提供している。同社はこれまでに1,486件(総面積:4,571万㎡)の不動産の新規開発や再開発、物件取得を実施。現在、世界各地で171件以上の開発を進めており、木造オフィスの開発にも取り組んでいる他、住友林業とは北米で2件の大規模宅地開発事業でパートナーを組み、良好な協業関係にある。同社はESGへの取組も進めており、世界で最も規模が大きく評価の高い不動産会社の一つと認識されている。
<プロジェクト概要>
※2 出典:Global Alliance for Buildings and Construction, “2020 GLOBAL STATUS REPORT
FOR BUILDINGS AND CONSTRUCTION”
※3 WGBC: World Green Building Council
国連グローバル・コンパクトのメンバーで、世界各地の約70のグリーンビルディング協議会からなるグローバルアクションネットワーク
※4 豪州調査機関Pollinate調べ。
※5 木造建築で柱や梁などの構造材が見える状態で仕上げる手法。
※6 再生可能な生物由来の資源をバイオテクノロジーなどの技術を用いて可能な限り長期にわたって使用することで、資源効率を最大限に高め、環境負荷を軽減する循環型の経済システム。
※7 中大断面集成材や直交積層材(CLT)を柱、梁、床に使用。