HUMAN FIRST研究所「新しいオフィスの在り方や価値に係る調査研究」第2回『個人のパフォーマンス向上因子』に関する協働調査研究結果
~働く場所の選択肢の数がパフォーマンスに影響~ 法政大学経営学部 永山晋准教授との協働研究
野村不動産株式会社(本社:東京都新宿区/代表取締役社長:宮嶋 誠一、以下当社)は、企業や有識者とのパートナーシップのもと、新しいオフィスの在り方や価値に係る調査研究を実施する「HUMAN FIRST(ヒューマン ファースト)研究所」の活動を行っておりますが、今般、テレワーク時代における「個人のパフォーマンス※1向上因子」に関する調査研究結果を取り纏めましたので、公開いたします。【主な調査結果】
1.個人のパフォーマンス※1向上因子
「在宅勤務の頻度」は個人のパフォーマンス※1にあまり影響しない。一方、仕事で利用する場所の「種類(の多さ)」はパフォーマンス※1にプラスの影響を与え、その影響度合いは「所得(の高さ)」がパフォーマンス※1に与える影響を上回る。
2.パフォーマンス※1が高い人の特徴
パフォーマンスが高い層※2ほど仕事で利用する場所の「種類」が多く、「目的」ごとに場所を使い分ける傾向が強い。また、場所に対する「好意」も高く、「種類」「目的」「好意」を組み合わせたワークユニットを多く所有している。
3.移動とパフォーマンス※1の関係
移動習慣の変化や新しい場所への訪問といった「移動(の多さ)」が個人のパフォーマンス※1にプラスの影響を与えている。特に「オフィス内の移動」はパフォーマンス※1に与える影響がもっとも大きい。
《法政大学経営学部 永山晋准教授のコメント》
近年、好きな時間に好きな場所で働く「ワーク・フロム・エニウェア(Work From Anywhere: WFA)」が、オフィス、在宅勤務と比較し、個人の生産性を最も高める、という結果が研究で得られています※3。WFAは社員にとって非金銭的なインセンティブとなるうえ、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすいからです。
今回の我々の調査によって、WFAは、生産性という直近のパフォーマンスだけでなく、エンゲージメント、ウェルビーイング、クリエイティビティという持続的価値創造に必要なパフォーマンスをも高め得ることがわかりました。また、我々に必要なのは単なるWFAではなく、目的を意図的にデザインしてワークプレイスを使い分けるという一歩進んだWFA、ということもわかりました。
【個人のパフォーマンス※1向上因子に関する調査研究 概要(2021年1月実施)】
チームで仕事をしている一都三県居住の20~69歳の男女3091名を対象に、個人のパフォーマンス※1向上因子に関する調査研究を実施しました。
《パフォーマンス指標の定義》
今回の調査では「エンゲージメント」「ウェルビーイング」「クリエイティビティ」に関する設問項目の回答を点数化し、それら3つの指標を標準化後に平均値を取ったものを、個人のパフォーマンススコアとして設定しています。なお、同スコアは、パーソナリティの代表的理論である「ビッグ5モデル」の各パーソナリティ指標とも整合的な関係をもつこともわかりました。HUMAN FIRST研究所では、同スコアを「ヒューマンパフォーマンス・スコア」として独自に定義し、今後も各種研究活動に活用していきます。
(図1)
今回の調査では、調査対象であるビジネスパーソン3091名のうち、上述のヒューマンパフォーマンス・スコアの値(0.00点~5.00点)が上位25%の層(3.83点~5.00点)、下位25%の層(1.00点~2.83点)を抽出し、比較分析を行っています。
(図2)
※1:今回の調査におけるパフォーマンスとは、「エンゲージメント」「ウェルビーイング」「クリエイティビティ」に関する設問項目の回答を点数化し、各指標を標準化後に平均した値を「ヒューマンパフォ―マンス・スコア」として独自に定義したものです
※2:今回の調査では、調査対象であるビジネスパーソン3091名のうち、ヒューマンパフォーマンス・スコアの値(0.00点~5.00点)が上位25%の層(3.83点~5.00点)、下位25%の層(1.00点~2.83点)を抽出し、比較分析を行っています。
※3:Choudhury, P. (Raj), Foroughi, C., & Larson, B. (2020). Work-from-anywhere: The productivity effects of geographic flexibility. Strategic Management Journal, 1–29.
《調査研究結果のポイント》
1.個人のパフォーマンス※1向上因子
■「在宅勤務」がパフォーマンス※1に与える影響度は相対的に低い結果に。
■仕事で利用する場所の「種類」は、個人の「所得」以上にパフォーマンス※1にプラスの影響をもたらす。
個人環境や組織環境に関する要素と個人のパフォーマンス※1との相関関係を分析したところ、「組織の創造性環境要因」、「チームのパフォーマンス」は、個人のパフォーマンス※1に大きな影響を与えていることが確認できました。また、「在宅勤務の頻度」は影響度が0に近しい値となり、パフォーマンス※1にほとんど影響を与えていないことが示唆される結果となりました。一方で、仕事で利用する場所の「種類」が多いほど、パフォーマンス※1にプラスの影響を与えることが判明。その影響度は「所得(の高さ)」を上回るレベルでした。
・上の図は職業や職務などの様々な要因の影響を取り除く統計的な処理により各特性と個人のパフォーマンス※1の関係を推定したものです。
・各特性の関係の大きさを比較できるように、標準化して推定しています。
・組織の創造性環境要因:組織体制、マネジメント体制、人的・金銭的資源、仕事量など、組織の創造性を発揮する上で必要な環境が整っているかどうかという指標
・「所得」の値が平均から1標準偏差高まった場合と、「仕事で利用する場所の種類」の値が平均から1標準偏差高まった場合を比較すると、「仕事で利用する場所の種類(の多さ)」は「所得(の高さ)」以上にパフォーマンス※1にプラスの影響がみられます。
2.パフォーマンス※1が高い人の特徴
■ハイパフォーマンス層※2は、仕事で利用する場所の種類が多い。
仕事で利用したことのある場所(ワークプレイス)を聞いたところ、パフォーマンス※1が高い人ほど仕事で利用する場所の種類が多い傾向が明らかになりました。特に上位25%のハイパフォーマンス層※2では3種類以上のワークプレイスを持つ人が4割を超えており、4種類以上のワークプレイスを持つ人も2割以上という結果となっています。
■パフォーマンスが高い層※2ほど「種類」「目的」「好意」の組み合わせから成るワークユニットが多様。 好きな場所を目的ごとに使い分ける働き方が重要に。
仕事で利用する場所(ワークプレイス)の利用率・利用目的・好意度を、ヒューマンパフォーマンス・スコアの上位25%層と下位25%層で比較すると、前者の方が各ワークプレイスの利用率が高く、また明確な目的意識を持ち、目的に応じてワークプレイスを使い分けていることが分かりました。また上位25%層は全体的にワークプレイスに対する好意度が高く、自社オフィスに対する好意度は下位25%層と比べ+45pt(75.1%)、サテライトオフィス・コワーキングスペースでは+43.5pt(79.9%)と、その差が顕著に表れています。こうした結果から、仕事で利用する場所の「種類」「目的」「好意」の掛け算から成るワークユニットの数が個人のパフォーマンス※1の鍵を握っていることが伺えます。
3.移動とパフォーマンス※1の関係
■よく移動する人ほどパフォーマンス※1が高い
移動習慣の変化や新しい場所への訪問など、「移動」とパフォーマンス※1にも相関が見られています。特に「社内移動」は、パフォーマンス※1にもっともプラスの影響を与えることがわかりました。
・上の図は職業や職務などの様々な要因の影響を取り除く統計的な処理により各特性と個人のパフォーマンス※1との関係を推定したものです。
・各特性の関係の大きさを比較できるように、標準化して推定しています。
【調査概要】
調査期間:2021年1月25日~1月26日
調査方法:インターネット調査
対象:チームで仕事をしている一都三県居住者 20~69歳男女3091名
(企業規模:1000 名以上/300 名以上~1000 名未満/300 名未満、役職:経営層・管理職/一般職)
【HUMAN FIRST 研究所】
https://www.officenomura.jp/kenkyujo