日本臨床スポーツ医学会・日本臨床運動療法学会共同声明「新型コロナウイルス感染拡大防止期間中における屋外での運動に際しての注意」発表
「屋外運動時にはマスク着用を勧めない」「すれ違った程度では感染しないがソーシャルディスタンスを心がける」「ロッカールームやタオル使用への注意喚起(汗からは感染しない)」「高強度長時間運動後は免疫機能が低下する」などが提案されました。
日本臨床スポーツ医学会・日本臨床運動療法学会共同声明:新型コロナウイルス感染拡大防止期間中における屋外での運動に際しての注意
新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛要請では、感染予防に配慮して実施する心身の健康維持・増進のための屋外での運動は自粛項目に含まれていません。しかし、運動時の激しい換気によりウイルスを含む飛沫が飛散し、それの吸入を防止するための運動時のマスク等の着用が、インターネットやマスコミを通じ紹介されました。それ以後、屋外での運動実施への誤解や、運動時にはマスク着用が有用であるという認識が高まっています。
一般的にマスクは他者への感染拡大予防に寄与するものと考えられますが、運動中には激しい換気によってマスクの形状が変化します。ランニングのように換気量が増大し、前面からの気流を直接受ける状況では、マスクが安静時と同様の機能を果たすかどうか十分な検討はなされていません。一方、マスク等の装着は呼吸を制限することから、健康上望ましいとされるやや息が上がる強度の運動(文献1)の実施も困難とします。さらに気温と湿度が高い夏季には、マスク等は呼気からの気化熱および顔面の皮膚血管拡張による熱放散(文献2)を妨げる要因にもなり、熱中症の危険性も高まります。なお、厚生労働省と環境省は熱中症予防の観点より、マスク着用時は体に負荷がかかる作業や運動を避け、屋外で人と2m以上離れられる時は、運動時に限らずマスクを外すよう求めています。
新型コロナウイルスとは、長期にわたって向き合わなければならないことが予想されています。わが国の健全な社会、そして子どもたちの未来のために,屋外での運動の有用性とリスクについて正しい国民的理解が得られなければなりません。国民の不安解消に資するよう、屋外での運動に対し、日本臨床スポーツ医学会・日本臨床運動療法学会は共同声明として以下の提案をいたします。
- 運動は、ストレス・生活習慣病・認知症・要介護等の予防・改善に極めて有効です。高齢者や有疾患者、障がい者の方も主治医に相談した上で、これまで通り実施してください。
- 屋外運動時のマスクや口鼻を覆うものの着用は、基本的には推奨いたしません(熱中症や呼吸不全の危険が高まる可能性があり、海外では死亡例もあります)。
- 新型コロナウイルスはすれ違った程度では感染しないと言われていますが、空いた場所や時間を選び、少人数(できれば一人)で、信号待ち等も含め2m以上のソーシャルディスタンスを保つようにしてください。
- ロッカールームや更衣室などは、三密(密閉・密集・密接)になりやすいので特に注意し、使用後のタオルは他人が触れないように気をつけてください(汗からの感染はありませんが、鼻や口も一緒に拭くことでウイルスが付着する危険性があります)。
- 高強度・長時間の運動後には、一時的に免疫機能が低下することがあり、感染予防に気を配ってください。
- 国や自治体が屋外での運動を禁止した場合は、それに従ってください。
一般社団法人 日本臨床スポーツ医学会
特定非営利活動法人 日本臨床運動療法学会
※2020年7月6日(月)15:15~15:45 Zoomによる発表会見を行います。
トピック: 日本臨床スポーツ医学会・日本臨床運動療法学会共同声明会見
時間: 2020年7月6日 03:15 PM 大阪、札幌、東京
Zoomミーティングに参加する
https://zoom.us/j/99752976236?pwd=R0lnM0lsRTMxaUY1cHV3cXNHRm1uUT09
ミーティングID: 997 5297 6236
パスワード: 659720
Zoom会見に参加できなかったマスコミ関係者のために、その模様は、後ほどYouTubeの「同志社大学スポーツ医科学研究センター」のチャンネルに動画掲載します。
https://www.youtube.com/channel/UCFkLjDyju3sbrsmxkxXUrdQ?view_as=subscriber
日本臨床スポーツ医学会は、日本最大のスポーツ医学に関する学会であり、臨床スポーツ医学領域における研究の促進と情報交換を図り、スポーツ医学の進歩・普及とスポーツの発展に寄与し、国民の健康と福祉に貢献することを目的としています。会員には多くの競技団体の医事委員が所属しています。
日本臨床運動療法学会は、医学、スポーツ科学、健康及び生活習慣病の予防とその治療等に関する学際的な研究を推進するため、臨床運動療法に関する学術集会等の開催や普及啓発活動を行い、その進歩発展を図り、もって国民の健康福祉の増進に寄与することを目的としています。会員には予防医学やリハビリテーション医学に携わるものが多く所属しています。