慶應義塾大学とアストラゼネカ株式会社が 循環器・腎・代謝疾患領域における リアルワールドエビデンス(RWE)の創出に関する共同研究契約を締結
産学連携で地域特性に応じた保健医療施策への貢献を目指す
慶應義塾大学(所在地:東京都港区、塾長:長谷山 彰)と、アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ステファン・ヴォックスストラム、以下、アストラゼネカ)は、行政系医療保健データを活用した循環器・腎・代謝疾患領域(以下、当該疾患領域)におけるリアルワールドエビデンス(RWE)1の創出を目的とした共同研究契約を締結し、産学連携により地域特性に応じた効果的な保健医療施策への貢献を目指すことに合意しました。本共同研究は、慶應義塾大学が主導する、人々を中心とした情報基盤“PeOPLe2”の活用によってライフイノベーションの創出を目指すプロジェクトの一つです。このプロジェクトは、科学技術振興機構の産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)の事業に採択されています(主管:殿町タウンキャンパス)。アストラゼネカは、世界規模でのRWE研究の実績を活かし、慶應義塾大学と協働していきます。両者は、本共同研究により、介護も含めた多様なレセプト(診療報酬明細書)等の行政系医療保健データベースを正確に取得する基盤技術の開発と高度化、ならびに、当該疾患領域における疫学および疾病負担の理解や予防、医療資源配分の改善の観点からの利活用を検討します。
高齢化が進む日本では、当該疾患の罹患者数の増加に伴い、すでに国民の死亡原因の上位にあがる循環器病による死亡者数は、今後さらに増加することが予想されます。循環器病が国民の生命および健康にとって重大な問題となっている現状を鑑み、循環器疾患予防による国民の健康寿命の延伸と医療および介護にかかる負担の軽減を目的とした「脳卒中・循環器病対策基本法」が2018年12月に成立されました3。心不全をはじめとする循環器疾患によって患者さんの身体的、経済的、社会的負担が増大するという認識がある一方で、それらを総合的に分析した地域ごとの研究例は少なく、疾患の予防、早期発見・早期治療に向けた地方自治体による効果的な対策が難しい現状があります。
慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室 教授 宮田 裕章は、以下のように述べています。「当教室では、様々な自治体と連携しながら、医療を取り巻く実態を把握し、現状を改善するための政策の検討を行っています。超高齢社会であると同時に、少子化・人口減少が進行する日本社会においては、持続可能な社会システムを見出すことが喫緊の課題です。このような状況においては、疾病が進行してから高度な治療を届けるというだけではなく、より早期の段階で診断・治療することや、人々の健康を高めて疾病の発生率を減少させることが重要になります。日本には健康診断をはじめ、健康な段階からのデータが豊富にあります。PeOPLe構想の中で様々なデータを連結することにより、効果的な予防や早期治療の手がかりを得ることができるでしょう。また、アストラゼネカがグローバルに取り組んでいるリアルワールドデータ活用の知見は、日本の現状と課題を把握する上でも有用です。今後、欧州やアジア諸国も日本と同様、超高齢社会に突入することが予想されており、日本は世界の未来の姿であると言われています。アストラゼネカとのグローバルな連携の中で、持続可能な未来社会の姿を見いだすことができればと考えています。」
アストラゼネカ 執行役員 メディカル本部長 松尾 恭司は、以下のように述べています。「今回、慶應義塾大学と連携し、日本の地域医療体制の向上に貢献できる機会が得られたことを大変嬉しく思います。アストラゼネカでは、循環器・腎・代謝領域を注力領域の一つとして、相互に関連する循環器・腎・代謝疾患における幅広い患者さんのデータを構築する臨床試験およびリアルワールド研究を世界規模で実施しています。また、日本でも、日本の患者さんのリアルワールドデータを駆使した臨床・疫学研究を多数実施しており、患者さん中心の包括的なアプローチによる疾患管理を目指しています。これらの経験を活かし、患者さん、およびその先生方に広く役立つ情報を提供できるよう、アカデミアの知見をお借りしながら邁進して参ります。」
アストラゼネカの循環器・腎・代謝領域(CVRM)について
循環器・腎・代謝領域は、アストラゼネカの3つの主要治療領域のひとつであり、重要な成長ドライバーです。心臓、腎臓、膵臓などの臓器の基本的な関連性をより明確に解明するサイエンスを追求し、疾患進行の抑制やリスク減少、合併症の抑制による臓器保護と予後の改善をもたらす医薬品のポートフォリオに投資をしています。当社は、循環器・腎・代謝疾患をもつ世界中の何百万人もの患者さんの健康と、治療法の進歩に貢献する革新的なサイエンスを継続的に提供し、疾患の治療・進展抑制、さらには臓器およびその機能の再生の実現を目指しています。
References
- 臨床現場から得られるレセプトや電子カルテ、健診データなど、匿名化された個人単位のデータから構成されるデータベースを利活用し導き出されたエビデンス
- PeOPLe(Person centered Open PLatform for well-being):厚生労働省の「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」が提唱する保健医療情報を利活用するための情報基盤の構想
- 参議院法制局「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(平成30年12月14日法律第105号)」;2018年12月14日http://houseikyoku.sangiin.go.jp/bill/outline30105.htm
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttp://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。
日本においては、主にオンコロジー、循環器・代謝/消化器疾患、呼吸器疾患を重点領域として患者さんの健康と医療の発展への更なる貢献を果たすべく活動しています。当社については https://www.astrazeneca.co.jp をご覧ください。