トンネル坑内における遠隔施工管理の実現に向けて、IOWN(R)技術を活用し建設現場のDXを加速

NTT株式会社

発表のポイント:
  • 施工中の山岳トンネル建設現場でIOWN技術を活用した遠隔施工管理基盤実証実験を実施。粉塵、湧水等のあるトンネル坑内に光通信ネットワークをIP65準拠かつ総延長1km以上の坑内で延伸に対応できる形での構築
  • 1,000kmの長距離通信を模擬した大容量、高速のAPNと接続し、トンネル工事の最奥部(切羽)を含むカメラ15台の映像を伝送しながら、4K映像を通じて幅0.2mmのひび割れを遠隔確認
  • 今後は複数のトンネル現場、遠隔オフィス、データセンタをIOWN(R) APNで接続し、実際の運用を想定したトライアルを実施、2027年度以降、段階的な実運用に向けて検証を進める予定

 株式会社安藤・間(本社:東京都港区、代表取締役社長:国谷 一彦、以下、「安藤ハザマ」)、NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下、「NTT」)、富士通グループでネットワーク事業を担う1FINITY株式会社(本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長:森林 正彰、以下、「1Finity」)は、安藤ハザマが施工中の山岳トンネルの建設現場において、IOWN(R)技術(注1)を活用した山岳トンネルでの大容量高速データ通信の実証実験を実施しました。本実証実験は、建設現場のデジタルトランスフォーメーションの推進に向けた「トンネル工事現場の革新に向けたユースケース」(注2)の取り組みを進めたものです(図1)。発破や坑内湧水等、通信機器にとってオフィスや局舎(通信設備を収容する建物)とは異なる条件が揃うトンネルの坑内環境に合わせた運用が可能な光通信ネットワークを構築し、通信実効性および運用上の課題を明確化しました。これにより、従来は難しかった坑内の8K映像や点群等の大容量データを、遠方のオフィスやデータセンタに適時に伝送することが可能となります。
 実証実験では1,000kmの長距離通信環境を模擬し、IOWN(R) APN(注3) (オールフォトニクス・ネットワーク)、トンネル坑内光通信ネットワーク、無線を介した遠隔施工管理に必要なユースケースの実現性を確認、遠隔からの検査により坑内壁面における管理基準の1つである0.2mm(注4)のひび割れを発見可能であることを確認する等、技術的な有効性を確認 しました。今後は複数のトンネル現場、遠隔オフィス、データセンタを接続した運用トライアルへ展開し、建設現場のオートメーション化および施工管理の高度化に向けた検証を計画しています。さらに、2027年度以降、段階的な実運用に向けて検証を進め、運用トライアルで得られた知見をもとに実環境での有効性を検証します。
 

図1:トンネル工事現場の革新に向けたユースケース

1. 背景と目的
 人手不足や熟練者の高齢化、災害リスクが高い切羽近傍での作業の存在を背景に、山岳トンネル施工の遠隔管理が求められています。一方、従来の現場ネットワークでは、遠隔管理における現場技術者の施工判断に必要不可欠な高精細の映像や、レーザースキャナなどを用いて取得した大量の3次元計測データをリアルタイムで安定的に伝送することが課題となっています。
 今回の実証実験は、トンネル坑内から遠隔拠点までのAPN構築による大容量ネットワーク化を目的としたものであり、IOWN Global Forum(注5)における「トンネル工事現場の革新に向けたユースケース」である遠隔監視、遠隔検査、遠隔解析、リモートモニタリング等を実現するための技術基盤の構築をめざします。
 トンネルの最奥である切羽をはじめとしたトンネル坑内における任意の箇所のデータを大容量伝送できることは、上記ユースケースの実現のみならず、今後の施工自動化・最適化を支えるAI活用、デジタルツイン構築、ロボットの遠隔制御に必要な通信インフラとして重要です。トンネル最奥部や危険箇所の異常検知に必要な高精細画像・映像データやセンサデータ、作業継続判断に必要な3次元計測データ、さらには重機作業やロボット運搬作業時の周辺状況把握に必要な映像・3次元計測データなどをリアルタイムに伝送できることで、遠隔施工管理の高度化に加え、AIによる解析、自動化施工、ロボット活用の実現に寄与します。
 本取り組みを通じて、IOWN技術の建設業界における適用の可能性を検証し、将来的な建設業界における次世代通信インフラの標準化をめざします。

2. 実証実験の概要と主な成果
(1)ネットワーク構成
 実証実験は東海北陸自動車道(4車線化)椿原トンネル工事で実施し、トンネル坑内に光ファイバケーブルを1,100m敷設、切羽から100m間隔で6台の光伝送装置を設置しました。IOWN(R) APNを模擬した環境により遠隔拠点との通信環境を実現し、2026年3月に実証実験を行いました。(図2)
 

図2:実証実験ネットワーク構成

(2)主な成果
 実証実験で確認した主な成果は、以下のとおりです。各成果の評価内容および詳細結果は「5.補足資料」をご参照ください。

・光通信ネットワーク区間におけるパケットロスなし、ジッタ(通信遅延のばらつき)は100ナノ秒以下を維持し、24時間以上の連続稼働
・粉塵、振動、湧水等があるトンネル坑内環境における、IP65規格の収容箱内に設置した通信機器の安定動作
・WiGig(注6)を用いて、通信機器の設置間隔である100mかつ遮蔽物がある場合でも、0.2mmのひび割れの目視確認に必要な通信帯域(通信に使用される電波・光などの周波数の幅)の確保
・15台のカメラに相当する映像監視データの通信を継続しながら、約20GBの3次元計測データを坑内から現場事務所まで約1分間での伝送
・1,000km離れた拠点を想定した遠隔検査における4K映像と音声の伝送およびトンネル坑内の幅0.2mmのひび割れの目視確認。また、AI画像解析によるひび割れ検出にも成功

3.実証実験における役割
安藤ハザマ:実証実験環境準備、実証実験の推進
NTT:ユースケース検証のための無線・システム構築(遠隔検査・AI活用のひび割れ検知)
1Finity:IOWN(R) APNを模擬した環境構築、関連する技術的知見・機器の提供

4.今後の展望
 今後、山岳トンネル施工管理のユースケースの実現に向けて、IOWN(R) APNの実環境を活用した運用トライアルを実施し、複数のトンネル現場における遠隔監視、遠隔検査、AIによる遠隔解析および施工現場へのリアルタイムフィードバックならびに光ファイバ設備を活用したリモートモニタリングについて検証を行う予定です。
 これらの検証を通じて、複数現場の一元管理による施工管理業務の効率化や、専門技術者による遠隔からの技術支援を通じた現場人員の最適化の実現をめざします。また、運用トライアルで得られた知見をIOWN Global Forumをはじめとする業界団体や、建設業界に展開することで、次世代通信インフラの標準化への貢献をめざします。3社は、IOWN(R)技術をはじめとした光通信ネットワークやAIを活用した施工管理の高度化を推進するとともに、「トンネル工事現場の革新に向けたユースケース」の検討を進め、建設現場のデジタルトランスフォーメーションを加速していきます。

5.補足資料
 以下は、ネットワーク構成のポイントおよび各実証実験結果の詳細です。

(1)ネットワーク構成のポイント
・工事による延伸に合わせた随時の拡張や、複数のユースケースでの利用を前提とした構築
工事の進捗に応じた延伸対応や、複数のユースケースの同時利用に対応できる構成としています。また、工事現場において電源設置間隔が100m程度離れている場合を想定し、任意の箇所で大容量通信を利用するためのトンネル坑内における無線接続も前提とした構成としています。

・特殊な環境に対応した設置
山岳トンネルでは日々の発破作業に伴う瞬間的な振動・粉塵の発生に加え、湧水による湿潤環境、安全運用の面から床置きのラックが設置できない等、一般的なオフィスや局舎とは大きく異なる環境条件となります。そのため、工事期間中日々発生する発破作業に伴う粉塵や振動、湧水による水滴等へ対応可能な収容箱へ保管して、壁面のワイヤに吊架する設置としています。

(2)各実証実験結果の詳細
● 通信品質と長時間安定性
実証実験では、1Finity Ultra Optical System (注7)を組み合わせ(図3)、トンネル坑内から遠隔拠点までの大容量かつ安定した光通信ネットワークを構築しました。 光通信ネットワーク区間においてパケットロスは検出されず、ジッタは概ね100n秒以下を維持しました。また、24時間以上の連続稼働で長時間安定性を確認しました。この検証により、通信断や遅延による作業の中断リスク低減、安定した遠隔施工管理の実現の効果が期待できます。
 

図3:1Finity Ultra Optical System

● 機器の耐環境性
本実証期間中、IP65規格の収容箱内に設置した通信機器は、過酷な地質条件(粉塵濃度や湧水)が揃うトンネル坑内環境においても安定動作できることを確認しました。(図4)
 

図4:通信機器の耐環境性確認状況

● 任意の場所での通信のための無線通信の有効性確認
WiGigを用いて、トンネル施工現場の特性を活かす形で無線の距離および角度依存性、遮蔽物がある場合の通信維持方法について評価を行いました。(写真1)1m離れた距離から0.2mmのひび割れ目視確認を行うのに必要な通信帯域を、通信機器の設置間隔である100mかつ遮蔽物がある場合においても確保できることを確認しました。これにより、施工状況により流動的な坑内環境において、光通信ネットワークと移動機器への無線機器の組み合わせにより、柔軟なネットワーク構築が可能になります。
 

写真1:無線通信を活用した検証状況

● 複数箇所の同時映像監視と大容量データ伝送の両立
15台のカメラに相当する映像監視データの通信を継続しながら、レーザースキャナで取得した約20GBの3次元計測データを、トンネル坑内から現場事務所まで約1分間で伝送することに成功しました。(写真2)複数箇所のリアルタイム監視を行いつつ、スポット的に詳細検査用の大容量データも送信できるため、遠隔からの施工管理と品質検査の並行実施が可能になる他、非常時の施工継続判断にかかる時間も短縮可能となります。
 

写真2:レーザースキャナによる点群計測

● 遠隔臨場・遠隔検査トライアル
APN-坑内ネットワーク-無線ネットワークをまたいだネットワークにおいて映像・音声データを使った遠隔検査環境を構築し、1,000km離れた拠点を模擬した遠隔検査を実施しました。4K映像と音声を伝送し、遠隔側が現場とコミュニケーションを取りながら、トンネル坑内の幅0.2mmのひび割れを発見可能であることを確認しました。(写真3)ひび割れについては、凹凸ある壁面画像を学習させ、トンネル坑内の照明環境で撮影した画像からAI画像解析による検出にも成功しました。これにより検査者の確認作業を支援し、人間による検査時の見落としを低減し、異常の早期検知を可能にします。
 

写真3:遠隔検査のトライアル状況

6.各社の参画目的
安藤ハザマ
 DXビジョン2030を掲げ、2022年7月に建設業界で初めてIOWN Global Forumに加入して以降、建設業界におけるリーディングカンパニーとして、ユースケース、ドキュメント作成を主導して行っています。今後の検討では山岳トンネル工事の生産性および安全性を向上させる取り組みとして、当社が開発を進めている「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM(R)」の通信基盤としてIOWN(R)を活用します。

NTT
 高速低遅延のネットワークをお客さまに提供してきた実績を有するとともに、IOWN(R)  APNをはじめとしたIOWN(R)構想を推進しています。今後の検討では、IOWN(R)を構成する各技術やコンピューティング・AI基盤との連携など、建設現場ユースケースに必要なアーキテクチャや仕様の検討・検証を行います。また、NTT保有技術であるインフラ設備を効率的に保守する技術(画像・動画・光ファイバ解析のAI活用等)の将来的な活用・実装について、検討を行います。

1Finity
 次世代の産業インフラを支えるネットワークカンパニーとして、ミッションクリティカル分野で培ってきたネットワーク技術のIOWN(R)適用・社会実装の加速を進めています。今後の検討では、高い安全性が求められる建設現場の課題解決を実現するリファレンスモデルにおいて、コンピューティング・AI基盤との連携など求められるネットワーク技術の更なる高度化をめざします。

(注1)IOWN(R)  (Innovative Optical and Wireless Network)技術
 あらゆる情報をもとに個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・ 情報処理基盤の構想です。
( https://group.ntt/jp/group/iown/ )
「IOWN(R)」はNTT株式会社の商標または登録商標です。

(注2)トンネル工事現場の革新に向けたユースケースに関する2025年8月7日のプレスリリース
 https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/08/07/250807a.html

(注3)IOWN(R)  APN
 IOWN Global Forumにてオープンにアーキテクチャ策定が行われているフォトニクス技術をベースとした革新的ネットワークです。フォトニクス(光)ベースの技術の適用範囲をネットワークから端末まですべてに拡大することで、現在のエレクトロニクス(電子)ベースでは困難な、低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現します。
https://www.rd.ntt/iown/

(注4)0.2mmのひび割れ
 国土交通省の施工管理基準や各地方整備局の品質出来形管理基準において対象とされる管理基準です。

(注5)IOWN Global Forum
 IOWN技術およびユースケースの開発を目的として2020年に設立された国際的なフォーラムで、175を超える組織が参画しています。IOWN Global Forumの目的は、フォトニクスの研究開発、分散コンピューティング、ユースケース、ベストプラクティスなどの分野において、新技術、フレームワーク、仕様、およびリファレンスデザインの開発を通じ、将来のデータ処理およびコンピューティング需要に対応する新たな通信インフラのイノベーションと普及を加速することです。詳細はIOWN Global Forumのホームページをご覧ください。 
https://iowngf.org/

(注6)WiGig(Wireless Gigabit)
 IEEE 802.11ad規格に基づいた60GHz帯を用いる無線LAN規格です。

(注7)1Finity Ultra Optical System
 https://www.1finity.co.jp/solutions/photonic/ultraopticalsystem

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