【日本大学】喘息の3か月間のコントロールを評価し、将来の発作 リスクを予測する質問票「LAQ-6」を開発~喘息の寛解を目指す外来診療への活用に期待~

日本大学

【 概  要 】 日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野の黒澤雄介、權寧博(主任教授)、水村賢司らの研究グループは、成人喘息患者の長期的なコントロール状態を、過去3か月を振り返る6項目で評価する新しい質問票「LAQ-6(Long-term Asthma Control Questionnaire)」を開発しました。 現在広く用いられている喘息の質問票は、直近1~4週間を振り返る短期的な指標です。一方、吸入薬や生物学的製剤の進歩により、喘息治療は、長期にわたって良好な状態を維持する「臨床的寛解」を目指す段階へ移りつつあります。臨床的寛解の評価には、通院間隔全体のコントロール状態を把握することが重要ですが、従来の短期間の質問票だけでは、実際の通院間隔である2~3か月間の症状変動や発作を十分に捉えにくいという課題がありました。 本研究では、LAQ-6が、過去4週間の喘息コントロール状態を評価する標準的な質問票であるACTと強く相関し、喘息関連QOLとも強く相関することを示しました。また、増悪や救急受診のリスク層別化に役立つ可能性も示されました。 LAQ-6は、既存の短期間の質問票を補完し、外来診療で長期的な状態を簡便に把握して「臨床的寛解」の評価を支援するツールとして期待されます。本成果は、アレルギー領域の国際専門誌The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practiceに2026年8月6日付でオンライン掲載されました。 【 研 究 内 容 】 ■背景  喘息治療は、吸入薬や生物学的製剤の進歩により、「臨床的寛解」を目指す段階に入っています。寛解の評価には一定期間にわたる良好なコントロールの確認が必要ですが、既存の質問票であるACT(過去4週間)やACQ(過去1週間)は振り返り期間が短く、実際の通院間隔である2~3か月間全体の状態を捉えにくいという課題がありました。 ■方法  日本大学医学部附属板橋病院に通院する成人喘息患者90名を対象とした単施設前向き観察研究です。ACT、LAQ-6、AQLQを実施し、登録から約6か月間の増悪と喘息関連救急受診を問診と診療記録で確認しました。相関解析やROC解析などにより、LAQ-6の妥当性、再現性、識別能、臨床指標との関連を評価しました。 ■結果1:妥当性  LAQ-6の合計点はACTと強く相関し(r=0.79、P<0.001)、喘息関連QOL(AQLQ)とも強く相関しました(ρ=0.763、P<0.001)。登録からLAQ-6評価時までに実施した複数回のACTがすべて20点以上だった「持続的に良好なコントロール」を識別するAUCは0.83でした。目安となるカットオフをLAQ-6 27点以上とすると、感度68.1%、特異度88.9%、陽性的中率95.9%でした。 ■結果2:増悪・救急受診リスクの層別化  約6か月の観察期間における増悪の識別能はLAQ-6でAUC=0.866、ACTで0.816、救急受診ではそれぞれ0.857、0.676で、LAQ-6のAUCが数値上高い結果でした。LAQ-6 27点未満群では増悪が26.3%(10/38名)、救急受診が13.5%(5/37名)に確認されましたが、27点以上群ではいずれも確認されませんでした(各0/49名)。 ■結果3:再現性・独立した関連  臨床的に安定した65名では、2~3か月間隔での再現性は良好でした(級内相関係数ICC=0.800)。年齢、BMI、対標準1秒量(%FEV1)、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)で調整した解析でも、LAQ-6は「持続的に良好なコントロール」と独立して関連し、LAQ-6が1点高いごとの調整オッズ比は1.33(95%信頼区間1.16~1.53、P<0.001)でした。 【 今後の展開 】 本研究は単施設で実施され、対象の多くが比較的コントロール良好で、増悪・救急受診の件数も少ない研究でした。今後は、コントロール状態や重症度がより多様な患者を含む多施設研究によって、カットオフ値の妥当性と一般化可能性を外部検証する必要があります。 また、患者へのインタビュー(認知デブリーフィング)による内容妥当性、理解しやすさ、解釈しやすさの確認や、増悪、経口ステロイド使用、FeNOなどの客観的指標との関連の検討も今後の課題です。 これらの検証を経て、2~3か月間隔の喘息外来において、LAQ-6が臨床的寛解を目指す診療を支援するツールとして活用されることが期待されます。 【 用語解説 】 ◆LAQ-6:過去3か月の仕事・家事への影響、息切れ、増悪、救急受診、無症状状態、治療満足度を6項目で評価する質問票。合計6~30点で、得点が高いほど長期的なコントロールが良好であることを示す。 ◆ACT(喘息コントロールテスト):過去4週間の喘息の状態を5項目で評価する、国際的に広く使われている質問票。合計20点以上が「良好なコントロール」の目安とされる。 ◆AQLQ(喘息QOL質問票):喘息が日常生活の質(QOL)に与える影響を評価する質問票。 ◆ROC解析・AUC(曲線下面積):質問票などが目的の状態をどの程度見分けられるかを評価する統計手法とその指標。AUCは0~1の範囲をとり、0.5は偶然と同程度の識別能、1.0は完全な識別を示します。 【 本研究について 】 掲載誌:The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 論文タイトル:Development of the Six-Item Long-Term Asthma Control Questionnaire: a Questionnaire for Assessing Long-Term Asthma Control 著者:Yusuke Kurosawa, Yasuhiro Gon(共同筆頭著者), Eiko Ukiya, Michio Kawamura, Ryosuke Ozoe, Shiho Yamada, Yutaka Kozu, Takashi Oki, Tetsuo Shimizu, Motoyasu Iikura, Shuichiro Maruoka, Kenji Mizumura(責任著者) DOI:10.1016/j.jaip.2026.07.036 / 研究資金:特定の助成なし / 倫理:日本大学医学部附属板橋病院倫理委員会承認(承認番号:RK-250114-4) 【 問い合わせ先 】 權 寧博(ごん やすひろ) 日本大学医学部 内科学系・呼吸器内科学分野 主任教授 日本大学医学部附属板橋病院 アレルギーセンター長 所在地:〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1 TEL:03-3972-8111 内線2402(医局)2650(教授室) E-mail: gon.yasuhiro@nihon-u.ac.jp ※取材にお越しいただく際は,あらかじめ上記連絡先までご一報願います。 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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