【東京農業大学(研究成果)】アッケシソウが元気に育つ自生地から、保全につながる土壌と細菌の手がかりを発見
東京農業大学 北方圏農学科 坂本 光 准教授、食香粧化学科 松谷 峰之介 准教授、農芸化学科 加藤 拓 教授との共同研究です。
概要
日本では、北海道の他に、香川県と岡山県の限られた塩湿地にしか生息が認められておらず、沿岸の生物多様性や生態系維持の観点からも保全が必要な植物です。しかし、環境中で保全に重要な土壌要因や微生物要因については、不明な点が多いです。
研究の出発点は、東京農業大学の実学主義の精神を象徴する、初代学長・横井時敬の言葉「稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け」です。この言葉に着想を得て、「アッケシソウのことはアッケシソウに聞け」という考えのもと、元気に育つアッケシソウと、その足元の環境に注目しました。生育のよい自生地を詳しく調べることで、この植物を守るために必要な環境条件が見えてくるはずだと考えました。今回の成果は、植物そのものに加え、それを取り巻く土壌や目に見えない微生物にも目を向けることが、自生地の保全や再生を考えるうえで重要な手がかりとなることを示しています。
我々は、アッケシソウがよく育つ自生地に着目し、その生育と土壌の性質、根に関わる細菌との関係を調べました。その結果、アッケシソウの生育には場所による違いがあり、土壌粒子の構成、塩分の程度、酸性・アルカリ性の度合い、炭素や窒素の量などが、細菌の集まりの違いと関係していました。生育のよい場所では土壌や細菌の集まりに特徴があり、とくに根で特徴的に多く見られた「Luteibacter」という細菌の仲間に、アッケシソウの生育を促すものが含まれることを実験で証明しました。
Luteibacter属の細菌を加えたアッケシソウは、加えなかったものに比べて、長さが1.2~1.4倍、重さが1.6~2.1倍になりました。自生地の観察から得た手がかりが、生育を促す細菌の発見につながりました。
今後の展望――植物と、その足元の環境を守る
今回の成果は、アッケシソウの保全を考えるうえで、土壌の性質と根に関わる細菌をあわせて調べることの重要性を示しています。
一方、今回の実験で生育を促したLuteibacter属細菌が、自然の自生地でも同じ効果を発揮するかは、今後の検証が必要です。土壌条件や周囲の生き物との関係も含めて確かめながら、保全や再生への活用を検討していきます。
図2. 北海道網走市卯原内になるアッケシソウ (サンゴ草) の群落
2024年8月撮影
論文情報
Kubo H, Murakami R, Kato K, Tsuna M, Koizumi T, Saito H, Kato T, Matsutani M, Sakamoto H, Saitoh H and Yamamoto K (2026) Favorable habitats of endangered halophytes harbor unique soil properties and bacterial communities, with a dominant root-associated genus promoting host plant growth. Front. Soil Sci. 6:1959075. doi: 10.3389/fsoil.2026.1959075
公開日: 2026年10月5日(オンライン公開)
