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本研究では、「Metap1D(Methionine aminopeptidase 1D)注1」というペプチド分解酵素注2が細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリア注3の機能を維持することで、筋肉の形成や再生を支えていることを発見しました。本成果は、加齢や疾患による筋力低下の新たな理解と治療法開発につながる可能性があります。
本研究成果は国際学術誌「Experimental Cell Research」に2026年4月2日付でオンライン掲載されました。
ポイント
・筋肉のもととなる筋原性細胞注4の健康を保つ仕組みは十分に分かっていなかった。
・ミトコンドリア内のペプチド分解酵素「Metap1D」が筋原性細胞の正常な筋分化注5に必須であることを発見。
・将来的に、筋力低下や筋疾患の新たな治療標的となる可能性を明らかにした。
研究の背景
筋肉は、体を動かすだけでなく健康を維持するうえでも重要な組織です。その維持には、筋肉のもととなる細胞(筋原性細胞)が正常に増え、適切に働くことが不可欠です。しかし、これらの細胞の健康がどのように保たれているのかは、十分には解明されていませんでした。そこで本研究では、細胞内でエネルギーを生み出すミトコンドリアに着目し、その機能を支える分子の役割を調べました。
研究結果の概要
本研究により、ミトコンドリアに局在するペプチド分解酵素「Metap1D」が筋原性細胞の健康維持に重要であることが明らかになりました。Metap1Dが正常に働いている場合、ミトコンドリアは適切な形と機能を保ち、細胞は活発に増殖・分化します。一方でMetap1Dの働きが低下すると、ミトコンドリアは断片化し、その機能が低下することで細胞の増殖能力も損なわれることが分かりました(図)。この結果は、筋肉の形成や再生においてミトコンドリアの状態が極めて重要であり、その維持にMetap1Dが関与していることを示しています。
本成果の意義
加齢や病気に伴う筋力低下は、健康寿命に直結する重要な課題です。本研究は、筋肉の衰えの新たな分子メカニズムを示したものであり、将来的には筋疾患や筋肉減少症サルコペニア注6に対する新しい治療法の開発につながる可能性があります。
掲載情報
本研究成果は、国際学術誌『Experimental Cell Research』に掲載されました。
用語解説
注1)Methionine aminopeptidase 1D(Metap1D)
細胞小器官であるミトコンドリアに局在し、新しく作られたタンパク質の先端にあるメチオニンを切り取ることで、タンパク質を適切な状態に整える酵素の一つです。
注2)ペプチド分解酵素
ペプチドとは2つ以上のアミノ酸が鎖状につながった分子の総称で、それらを最小単位のアミノ酸へと分解する酵素群です。
注3)ミトコンドリア
細胞内に存在する小器官の一つで、栄養素からエネルギー(ATP)を作り出す働きを持つ。“細胞の発電所”とも呼ばれ、細胞の活動や生存に不可欠です。
注4)筋原性細胞
筋肉のもととなる細胞で、増殖して筋肉へと分化する能力を持ち、筋肉の形成や再生に重要な役割を果たします。
注5)筋分化
筋肉のもととなる細胞(筋原性細胞)が増殖した後、融合して筋管を形成し、成熟した筋肉細胞へと変化する過程。
注6)筋肉減少症サルコペニア
加齢や疾患により筋肉量が減少することで、全身の筋力低下および身体機能の低下が起こることを意味します。
論文情報
論文名:Methionine aminopeptidase 1D preserves myogenic cell integrity via maintaining mitochondrial activity
和訳:Methionine aminopeptidase 1Dは、ミトコンドリア機能の維持を介して筋原性細胞の恒常性を保持する
巻号:Volume 459, Issue 1, 1 June 2026, 115005
著者名:Cheng-Ta Tsai, Chi-Fang Hsu, Reiya Murakami, Yuzuki Takagaki, Haruki Uchibori, Masaki Kaneko, Katsuhiko Hata, Yutaka Kano, Shion Osana*
(蔡承達、許繼方、村上礼也、高垣柚樹、内堀晴哉、金子雅希、羽田克彦、狩野豊、長名シオン*)
*責任著者:国士舘大学体育学部スポーツ医科学科/国士舘大学大学院救急システム研究科 准教授 長名シオン(おさな しおん)
掲載誌:Experimental Cell Research誌
DOI:10.1016/j.yexcr.2026.115005
URL:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0014482726001229
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(JP23K16670)の支援により行われました。
▼本件に関する問い合わせ先
(研究に関すること)
国士舘大学体育学部スポーツ医科学科
准教授 長名シオン
TEL: 042-339-7312 E-mail: shiono@kokushikan.ac.jp
(広報担当)
学校法人国士舘 理事長室広報課 〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1
TEL:03-5481-3115 FAX:03-5481-5477 E-mail:kouhou@kokushikan.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/