【立教大学】神奈川県・佐島漁港で南方系テーブル状サンゴが水揚げ-日本国内における公的な最北限の分布記録-

立教大学

立教大学環境学部開設準備室の大久保奈弥教授と宮崎大学農学部の深見裕伸教授のグループは、神奈川県横須賀市の佐島漁港で水揚げされたテーブル状サンゴについて、日本国内における南方系ミドリイシ属サンゴの公式な最北限の分布記録として英文誌『Galaxea, Journal of Coral Reef Studies』に発表しました。本論文は、温暖化の進行に伴って南方系サンゴが北に分布拡大していることを示す重要な記録報告です。 立教大学環境学部開設準備室の大久保奈弥教授と宮崎大学農学部の深見裕伸教授のグループは、神奈川県横須賀市の佐島漁港で水揚げされたテーブル状サンゴについて、形態学的および遺伝学的にミドリイシ属のエンタクミドリイシ(Acropora cf. solitaryensis) 2群体、ミドリイシ(A. aff. divaricata) 1群体と同定し、日本国内における南方系ミドリイシ属サンゴの公式な最北限の分布記録として英文誌『Galaxea, Journal of Coral Reef Studies』に発表しました。本論文は、温暖化の進行に伴って南方系サンゴが北に分布拡大していることを示す重要な記録報告です。 【発見の概要】 2025年7月24日、佐島漁港沖・笠島付近(相模湾)で操業していた地元漁師によって、最大直径35cmテーブル状のミドリイシ属サンゴ3群体が水揚げされ、形態学的および遺伝学的にエンタクミドリイシ(Acropora cf. solitaryensis) 2群体、ミドリイシ(A. aff. divaricata) 1群体と同定されました。採取された水深は3〜5mで、現地ダイバーによると直径60cmに達するテーブル状サンゴも確認されており、これらのサンゴは少なくともおよそ10〜30年にわたり、相模湾の冬を越えて生存してきたと推定されます。これら2種には現在分類学的な問題があり、学名がまだ確定していません。九州以北や台湾北部ではその存在が確認されていますが、沖縄における分布については議論の余地があります。 【発見の意義】 これまで日本でのエンタクミドリイシおよびミドリイシの北限記録は、太平洋側では千葉県館山市波左間(34°58′ N, 139°47′ E)、日本海側では長崎県対馬市(34°24′ N, 129°16′ E)でした。今回の佐島での発見は、それよりさらに高緯度(35°22′ N, 139°60′ E)でサンゴ群体が確認されたことを意味し、相模湾を含む関東沿岸へのサンゴの分布拡大を明確に示しています。サンゴは"海洋環境の指標生物"であり、相模湾で大型の南方系テーブル状サンゴが生育しているという事実は、この海域の環境がこの10年で大きく変化したことを示しています。また、現在、大久保教授が(公財)大隅基礎科学創生財団の助成により実験動物モデル化を進めているストレス耐性の高いサンゴと、今回記録された北限のミドリイシ属サンゴを比較することで、水温などの環境要因に対する生理的な適応メカニズムの解明にも役立つと考えられます。 【今後の展望】 地元漁師によると、ここ4〜5年で佐島周辺の海でサンゴが目立つようになったとのことです。サンゴが新しい海域に定着すると、漁業資源にも影響を及ぼします。温暖化に伴うサンゴの北上と漁業対象種の変化を、沿岸生態系全体の変化として総合的に理解することが、これからの持続的な漁業管理に欠かせません。また、サンゴの中でもミドリイシ属サンゴは成長が速く、形や色も美しいことから、沖縄県では長年にわたり漁業・観光資源として増殖事業が進められてきました。その経済価値は高く、地域経済への活用も期待できます。 【謝辞】 本研究は公益財団法人大隅基礎科学創成財団の第7期研究助成「サンゴの一種をサンゴのモデル実験動物にするための生活史の解明とゲノム解析」の一部としておこなわれました。同財団が生物の生活史を含む基礎生物学的研究の意義を重んじ、地道な研究にも光を当てながら長期的な視点で支援を続けておられることに深く敬意を表し、心より感謝申し上げます。 本研究論文は、2025年11月21日、英文誌「Galaxea, Journal of Coral Reef Studies」に受理されました。 【論文掲載情報】 *掲載論文題名:Northernmost Official Record of Acropora cf. solitaryensis and A. aff. divaricata Colonies Landed at Sajima Fishing Port, Yokosuka City, Kanagawa Prefecture *掲載誌:Galaxea, Journal of Coral Reef Studies(印刷中) *著者:Nami Okubo*, Nobuhisa Iwasaki, Soranoshin Kodama, Hiroaki Ishiyama, Hironobu Fukami ★今回報告された日本最北限のテーブル状ミドリイシ(Acropora cf. solitaryensis)は、現在、神奈川県藤沢市にある新江ノ島水族館で生きたまま水槽内に展示されています(添付写真参照)。 ▼本件に関する問い合わせ先 立教学院企画部広報室 メール:koho@rikkyo.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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