積水ハウス株式会社は積水ハウスの様々な事業をお客様ストーリーや社員ストーリーとして紹介する「積水ハウス ストーリー」を公開しました。
新緑が鮮やかに広がり、清々しい風が吹き抜ける季節がやってきました。街を歩けば新緑や花の香り、そして心地よい風や夕日に染まる景色など、自然の恵みに触れる機会が増えていることでしょう。五感を通じて自然と触れ合うことが心を豊かにし癒しなどの心地よさをもたらすと言われています。この考えに基づき、環境省は五感を活かしたまちづくりを推進しています。全国各地で花の香りや小鳥のさえずりを身近に感じられる、人々の感情を重視した環境づくりが進められています。
環境省 「感覚環境のまちづくり」
https://www.env.go.jp/air/sensory/index.html
癒しを感じられる外構づくり
五感で感じる心地よさを追求し、患者様だけでなく働くスタッフも癒される空間を目指して、形成外科クリニックを建設されたのが、茨城県ひたちなか市にある「ひたちなか中央クリニック」の桑原大樹院長です。
ひたちなか中央クリニック 桑原大樹院長
患者数の増加に伴いクリニックのスペースが手狭となったため、診察室や治療室、駐車場を拡充することとなりました。その際、桑原院長は「ともに働くスタッフの癒しこそが職場環境の柱であり、それが患者様の癒しに繋がる」という考えをお持ちでした。桑原院長のビジョンは、ただ働くだけの場所ではなく、スタッフが癒され働きやすい空間を創り出すことでした。
この想いを具現化するため、積水ハウス 東関東営業本部の小林真が外構を担当しました。
小林は特別な空間をコンセプトにしました。それは、奥入瀬渓谷のような天然樹林が広がる自然公園の中にあるカフェやホテル、そして、京都の社寺にある鎮守の森の一角で木々に囲まれた図書館や美術館など、自然に囲まれた癒しの空間です。
積水ハウス 東関東営業本部 小林 真
「桑原先生は、もともと建築がお好きで、特に京都がお気に入りでした。その中でも有名なホテルのお庭と、エントランスがお気に入りということをお聞きしていたので、そのイメージを大切にしました。内外ともに天然木や石、日本の在来種などの樹木等自然素材を多用し、無意識に癒しを感じられる建築を目指しました。」と、小林は話します。
緑をつなげ周辺環境と調和
親水公園側をオープンにした駐車場、連続した緑で周辺環境と調和
この土地は北側が駅前からひたち海浜公園へ続く大通りで、イチョウ並木が続いています。東側には、親水公園の緑地が広がり自然豊かな立地となっています。少し低くなっている大通りの歩道からの視線は白塀で閉じつつ、内側には坪庭風の緑地が広がるようにしました。東から南に掛けては、アプローチや駐車場を親水公園側に開放し、公園の一部のように緑をつなげることで、街並みに溶け込み周辺環境との調和を図っています。また歩道にも緑を取り入れ、街に豊かな自然を提供しました。
居心地の良さと機能性を兼ね備えた外観
スクエアな建物にマッチする「箱の駐輪場」、歩行者のエントランスゲートにも
ファサードは建物の水平ラインを維持しつつ、緑と調和させました。南東角にはスクエアな建物にマッチするもう一つの箱として、シンボリックな格子の「箱の駐輪場」をつくりました。この駐輪場は、駅から続く白い壁に沿って歩いてくる人々をくぐるようにして迎え入れ、クリニックのエントランスへと自然に導く役割を担っています。まるで、駐輪場そのものが、歩行者のためのエントランスゲートのようです。
左:夜はライトアップされたヤマモミジと天然木貼りの箱
右:シンボリックな「箱の駐輪場」で華やかさと自然な温かみを演出
樹木はすべて、日本の在来種を中心に 、那須で大きな樹木を扱っている造園業者から仕入れました。高木のヤマモミジや武者立ちの姿が美しいアオハダは、小林が自ら選び、その繊細な樹形に桑原院長は大変満足されたとのことです。これらの木々をくぐると、奥に続く細い空間へと導かれ、ホールに向かう動線となっています。
左:那須の造園業者の畑にて(アオハダ) 右:高木のヤマモミジ
箱のエントランスゲートをくぐり右に曲がると、正面には病院の入り口が見えます。入り口を入ると右側には待合室とキッズコーナーがあり、キッズコーナーから続くデッキは森の中のテラスを思わせるようなデザインで、子どもたちが遊べる空間となっています。このデッキからも「箱の駐車場」が見渡せるほか、正面にある武者立ちの美しいアオハダも望めます。
左:待合室から望む
中:森の中のテラスをイメージしたキッズコーナーから続くデッキ
右:武者立ちのアオハダ
診察室へ向かう北と東の廊下の横に、異なるテイストの坪庭を配置しています。歩道からは見えないように配慮し、白い塗り壁を背景に院内のフロアよりも高い築山を設けました。手前には滝組と呼ばれる滝の流れを模した組み方で景石(お庭の石)を配置し、山採りのかたちを持つハウチワカエデで渓谷の景色を再現しています。廊下の照度は下げ、白壁の下にウォールアップライトを配置し白壁を光らせることで廊下を照らし、カフェの雰囲気を演出しました。
右:ウォールアップライトで照らしたカフェの雰囲気を演出した白壁
築山と滝組、山採りのハウチワカエデで渓谷の景色を再現
さらに2階の北西角にある施術室の前からも庭が眺められるように設え、どこの部屋からも緑が見えるように工夫しました。コハウチワカエデは2階の窓まで届く高さとし、スタッフの休憩室からもその美しい枝葉が望めるようになっています。ここにも、桑原院長の「全スタッフのためにも癒しの空間を提供したい」という温かな想いが込められています。一方、床にはグレーの溶岩石の床材を敷いて、シャープな印象を与えています。
左:2階から見たコハウチワカエデとシャープな印象の溶岩石の床材
右:ウォールアップライトに照らされた白壁とコハウチワカエデ
「桑原先生から『小林さんの提案通り2階にも枝を届かせ、全スタッフのスペースを充実させましょう。』というお言葉をいただき、2階スタッフルームや院長室からもアオダモやコハウチワカエデの枝葉が望める癒しの空間としました。一般的には緑を増やすと管理が大変になると、減らす方向になりがちですが、『働く人が癒されると病院全体がよくなる』という桑原院長の哲学に従い、このようなアプローチを取りました。桑原院長は本当に緑がお好きで、愛情を持ってご自身でもお手入れをされています。」と、小林は語ります。
「用と景」のバランスと自然素材で経年美化を楽しむ
木々とともにライトアップされた「ひたちなか中央クリニック」
今回のプロジェクトで小林は茶人である千利休の言葉、「渡り六分、景四分」を心に留めていました。単にデザインにこだわるだけでなく使い勝手にも配慮した空間を確保し、その中でどのようにデザインを展開するかを考えました。
現場で作業をする小林真
「駐輪場ではスペースを確保しつつも、日本の在来種を中心とした緑を活用して使い勝手と景色のバランスを考えました。緑には木の方が馴染むため、人工的な素材ではなく自然の素材を採用しました。土留めのファサードには石積や溶岩を選定し、これから3年、5年と経過するにつれて自然な風合いが出て経年美化が楽しめるよう心がけました。これらは、「5本の樹」計画に沿ったもので、心を込めてつくりました。」と、小林は語ります。
積水ハウスでは、 “3本は鳥のために、2本は蝶のために”という思いを込めて、独自のお庭づくり、「5本の樹」計画を提案しています。この計画では、日本の原風景である「里山」をお手本にし、昔から馴染み深い日本の原種や在来種(自生種)にこだわり、地域の気候や風土に合った樹木を厳選して植えています。これによって、多様な生き物が集まり、やがて庭は地域の緑と調和し、“小さな自然”が育まれていきます。皆様もそんな庭づくりに参加して、自然とともに生きる喜びを感じてみませんか。
https://www.sekisuihouse.co.jp/kodate/spec/environment/fivetree/