言葉の背後にある状況を深く理解し、より良い応答を導く高EQ対話知性技術を開発 ~長期的に安心して利用できるAIを実現し、スマホチャットサービスへの導入をめざす~

発表のポイント:
  • ユーザの背景や状況をとらえ、目先の満足だけでなくユーザの実生活における長期的な望ましさも考慮して、伝える内容や伝え方を改善する高EQ対話知性技術を開発しました。
  • 難しい対人場面における適切な状況理解力・応答力等からAIの感情的知能指数(EQ)を測る公開テストにおいて、発話内容の表面的な理解だけでは難しい、状況を理解する力や相手の立場を考えた課題解決の項目について、技術適用前と比べてスコアが平均で約23%向上しました。
  • 本技術は、NTT R&D FORUM 2026への出展を予定しています。

 NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)はAIの対話中のプロセスをEQ※1(感情的知能指数)の観点で評価・改善する技術基盤を開発しました。昨今、AIがユーザの意見や感情を表面的にとらえ、過度に同調することで、誤った判断や思い込みの助長、過度なAI依存を招くことが新たな課題として指摘されています。本技術により、AIはユーザの状況を理解し、ユーザの実生活における長期的な望ましさも考慮して、状況に応じて何をどのように伝えるかを調整できるようになります。本技術を構成する「高EQ発話最適化」においては、市中データセット※2で評価した結果、発話内容の表面的な理解だけでは難しい、状況を理解する力や相手の立場を考えた課題解決の項目について技術適用前と比べてスコアが平均で約23%向上※3し、EQが高い応答が可能であることが示唆されました。これにより、相談や意思決定など日常のさまざまな場面でユーザを支えるAIへの応用が期待されます。本研究成果は、2026年11月18日~25日に開催されるNTT R&D FORUM 2026※4に展示予定です。


1.背景
 近年、AIエージェントは、「ユーザの質問に答える」便利なツールから、日常のさまざまな場面でユーザを支援するパートナーへと、その役割を広げつつあります。一方で、AIがユーザの意見や感情に過度に同調・迎合する「シコファンシー」と呼ばれる現象をはじめ、AIの判断や応答がユーザに及ぼす影響も新たな問題として指摘され始めています。例えば、シコファンシー傾向があるAIはユーザから「自分を肯定してくれる」「また使いたい」と評価されやすい一方で、誤った思い込みを強めたり、自分の判断を振り返る機会が失われたりする可能性が報告されています。さらにその結果、AIへの過度な依存や、人間関係、意思決定などへの影響についても議論されています。こうした問題の背景には、AIがユーザの発話に表面的に反応し、その場の満足度を高めることを優先する一方で、その背景や状況を十分に理解し、本質的に「ユーザにとって何が望ましいか」を踏まえた関わり方を判断できていない、という課題があります。そこでNTTでは、ユーザにとって「その場で快適な対話」と「ユーザの実生活を踏まえた長期的に望ましい関わり」を両立させる能力としてEQ(Emotional Intelligence Quotient:感情的知能指数)の観点に着目し、EQ能力をAIに持たせた「高EQ対話知性技術」の開発に取り組みました。

2.技術のポイント
 高EQ対話知性技術は、ユーザの発話内容だけでなく、状況なども踏まえてユーザを理解し、その人や場面に応じた適切な応答を生成する技術です。これにより、単に質問に答えたり、ユーザの発言に同調したりするだけでなく、「何を伝えるべきか」「どのように伝えるべきか」を考えながら、より本質的に「ユーザにとって何が望ましいか」を踏まえた応答を実現します。具体的には、ユーザの状況を理解し、それに応じて応答内容や表現を調整する「高EQ発話最適化」、対話からユーザの背景や状況、その経緯などを捉え、ユーザにとっての出来事の関係性や時間的つながりをもつ情報として表現する「物語(ナラティブ)型ユーザ情報表現」、言葉に表されていない情報や共通認識を踏まえ、「全てを言わなくても伝わる」対話を実現する「ハイコンテクスト対話」の技術から構成されます。

 
 

 「高EQ発話最適化」は、EQに基づく多面的な評価観点から、AIによるユーザの状況理解や、応答内容・応答の仕方を最適化する技術です。「物語(ナラティブ)型ユーザ情報表現」は、ユーザ理解の基盤となるユーザ情報を、ユーザ自身を主人公とした物語形式で記録する技術です。単に発話内容から得られた事実を羅列するのではなく、行間を推測しながら、ユーザの背景やこれまでの経緯を補完します。こうした物語形式でユーザ情報を記憶することで、LLMがユーザの背景や出来事のつながりを文脈として参照しやすくなり、ユーザ理解力の向上が期待できます。「ハイコンテクスト対話」は、話し相手の背景や好みを考慮し、伝える情報量を調整して(ハイコンテクスト化)、相手にとって自然で分かりやすい表現で伝える技術です。これにより、相手が既に知っている情報の説明を省きながらも、意図が伝わる、簡潔で自然な対話の実現が期待されます。

▶高EQ発話最適化: AIが自らの発話に対してEQ評価、改善
既存の人間同士のコミュニケーションにおけるEQの指標を基に、AIが必要なEQ能力として「対話相手の背景を理解する力」「対話相手に寄り添う力」「理解した内容を応答に活かす力」「対話相手の社会的関係性を考慮する力」の4つの観点から、AIが自身の発話を評価・改善する技術を開発しました。本技術では、この4つの観点のEQ能力の知見をAIに適用し、そのAIを用いたAIの発話内容の評価を通じたAIの応答の改善に活用する学習技術により、相手の状況や背景を踏まえた、よりEQの高い発話の生成を可能としています。本技術は、難しい対人場面における適切な状況理解力・応答力等からAIの感情知能(EQ)を測る公開テストにより、ユーザ発話内容の表面的な理解だけでは難しい、状況を理解する力や相手の立場を考えた課題解決の項目について、技術適用前と比較してスコアが平均で約23%改善することを確認しました※3。テストの結果から本技術により「その場で快適な対話」と「ユーザの実生活を踏まえた長期的に望ましい関わり」を両立したEQの高い応答が可能となることが示唆されます。


3.今後の展開
 本技術については2026年11月18日から25日までNTT武蔵野研究開発センタで開催されるNTT R&D FORUM 2026にて展示発表します。また、今後はNTTドコモや外部パートナーと連携し、日常のさまざまな場面でユーザを支えるスマートフォン向けチャットサービスへの社会実装に向けた実証実験を進めます。そして、AIが人に次ぐ「第二の相談相手」としてより良い選択を考えられるよう身近で常時支え、ユーザがAIとともに人とのつながりや日々の生活をより充実させられる社会の実現につなげていきます。

【用語解説】
※1 EQ  IQ(知能指数) が認知的知能の高さを表すのに対して,感情的知能 (Emotional Intelligence ; EI) の高さを表す用語として一 般に使われています。
※2 EQ-Bench3( https://eqbench.com/about.html#eq-bench-3 ) による当社調査。
※3 EQ-Bench3において本技術適用前後で比較評価した結果。Claude Opus 4.6による自動ルーブリック評価(Warm、Empathy、Pragmatic、Social IQ、Insightful、Humanlike、Analytical、Assertiveの項目平均)から算出。
※4 NTT R&D FORUM 2026 https://www.rd.ntt/forum/2026/

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この企業の情報

組織名
NTT株式会社
ホームページ
https://group.ntt/jp/corporate/overview/
代表者
島田 明
資本金
93,800,000 万円
上場
東証プライム
所在地
〒100-8116 東京都東京都千代田区大手町一丁目5番1号大手町ファーストスクエア イーストタワー
連絡先
03-6838-5111

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