低軌道衛星で「より多く送る・より多くつなぐ」を実証、通信容量の拡大に成功 ~MIMOと衛星IoTで、通信網のない地域にも広がるセンシング基盤へ~

発表のポイント:
  • 低軌道衛星MIMO技術の実証実験において、従来の単一アンテナを用いた通信に比べて2倍以上の大容量化を確認することができました。さらに、伝送容量の実測値と解析値を比較したところ、変動のトレンドが高精度に一致し、伝送容量の変動パターンを推定できることを確認しました。
  • 衛星センシング技術の実証実験において、地上の異なる2地点から同一周波数で同時送信した920MHz帯LPWA信号を衛星上で受信し、2つの信号を正常に分離・復調することを確認しました。
  • 将来的には衛星通信サービスの通信品質向上や、地上通信網が整備されていない海洋や山間部等でのIoTデバイス活用やセンシングサービスなどへの応用が期待されます。

 NTT 株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と世界初の「衛星MIMO※1技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証」に向け、革新的衛星技術実証4号機(小型実証衛星4号機)※2に低軌道衛星MIMO/IoT伝送装置(LEOMI)を搭載し、軌道上実証実験を実施しました。その結果、低軌道衛星MIMO技術においては、単一アンテナを用いた従来の通信方式に比べて、最大約2.67倍の大容量化を確認することができました。衛星センシング技術においては、地上の異なる2地点から同一周波数で同時送信した920MHz帯LPWA信号を衛星上で受信し、2つの信号を正常に分離・復調することを確認しました。
 これらの確立により、将来的には地上通信網が整備されていない海洋や山間部等でのIoTデバイス活用やセンシングサービスなど、世界中であらゆるものがつながる世界を実現する、超広域省電力センシングサービスへの応用が期待されます。NTTでは引き続き、「NTT C89※3」ブランドのもとで衛星を活用した社会インフラ関連の問題解決を進めていきます。
 なお、本研究成果は2026年11月18日~25日に開催される「NTT R&D FORUM2026※4」に展示予定です。


図1.「低軌道衛星MIMO技術を活用した
衛星センシングプラットフォーム実証」のイメージ

1.背景
 NTTは、宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想の発表※5やスペースコンパス社の設立※6など、宇宙事業への取り組みを進めています。さらに、社会課題の解決につながる革新的な光ネットワーク・インフラの構築等の社会インフラ創出をめざし、2019年11月からNTTの光・無線ネットワーク技術とJAXAの「宇宙機のシステム構築技術」との掛け合わせにより、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」等に向けた共同研究※7に取り組んでいます。
 宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想のひとつである宇宙センシングは、衛星で取得した高精細で大容量な観測情報の利活用や、地上のあらゆる場所で取得したセンサーデータの収集を担う、超広域衛星センシングプラットフォーム※8の実現をめざしています。この実現には、低軌道衛星から地上基地局へ伝送する無線信号の周波数利用効率を向上し伝送容量を改善する「低軌道衛星MIMO技術」と、無線局免許不要で多様な地上用LPWA※9無線端末の収容を可能とする「衛星センシング技術」の実現が不可欠です。
 NTTとJAXAは、低軌道衛星MIMO技術および衛星センシング技術の実証に向け、「革新的衛星技術実証プログラム」の「革新的衛星技術実証4号機」の実証テーマに応募/選定されました。LEOMIを含む当該プログラムにおける実証テーマ機器を搭載する小型実証衛星4号機が2025年12月14日12時09分(日本標準時、24時間表記)打ち上げに成功したことを受け、世界初の「衛星MIMO技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証」の定常運用を2026年3月より開始しました。5か月間の試験の中で、低軌道衛星MIMO技術および衛星センシング技術それぞれ実証実験を実施しています。

2.技術の概要
 超広域衛星センシングプラットフォームの実現に向けた要素技術について、小型実証衛星への搭載性を考慮したスケールモデルとなるLEOMIを用いて低軌道衛星軌道上で技術実証を実施しました。

要素技術<1>:低軌道衛星MIMO技術(低軌道衛星-地上間通信の大容量化)
1.1 実証の概要
 衛星から地上基地局への通信であるフィーダリンクにおいて、複数アンテナを用いて異なる信号を同一周波数で伝送・分離することで、限られた周波数の利用効率を向上します。信号の分離精度を上げるため、地上基地局は遠隔に配置した複数の受信アンテナを用います。各受信アンテナで受信した信号は、異なる信号が混在していますが、地上基地局の信号処理によって分離を行うことで信号の多重伝送を実現します。
 低軌道衛星は伝搬路が時々刻々と変化する環境のため、遠隔に配置した地上基地局間で到来時間やドップラーシフトが異なる性質を持って受信され、多重信号の分離精度が劣化します。NTTとJAXAは、時間周波数非同期干渉補償技術、通信路モデル化(通信容量推定)技術、制御キャリアレスMIMO復調技術を用いることで、この課題に対して低軌道衛星へのMIMO適用の実現をめざし、軌道上で実証を行っています。
1.2 実証の効果
 軌道上実証により実際の低軌道衛星の伝搬環境下で本技術を確立することで、将来の衛星通信の抜本的な大容量化の実現が可能となります。これにより、衛星通信の伝送速度の向上や、収容端末数の大幅な増加、また観測衛星の高精細な画像・レーダー情報の取得が可能となり、気象情報、地形変化、海洋観測、災害予測などの観測精度の向上に寄与します。

要素技術<2>:衛星センシング技術(超広域衛星IoTプラットフォームに向けたIoT端末の小型・省電力・大規模収容(接続)の実現)
2.1 実証の概要
・地上の複数のLPWA方式のIoT端末から同一時間・周波数で送信し、複数端末の同時通信を実証します。
・衛星で受信した920MHz帯の電波の波形データにより、衛星IoTの電波環境を検証します。
2.2 実証の効果
 本技術を確立することで、小型かつ省電力のIoT端末を、衛星のみで地球上どこでも場所を問わず大規模に収容することが可能となります。地上基地局が不要であることから、例えばインフラ設備の点検、環境モニタリング、スマートメータ等で用いられるIoTサービスを低コストかつ広域に展開することが期待できます。

3.各社の役割

4.実験の概要
定常運用(2026年3月から約1年間)
 低軌道衛星MIMO技術および衛星センシング技術の有効性を実証します。

MIMO伝送試験の結果速報
 2026年3月13日の定常運用開始以降、約5カ月間にわたり低軌道衛星MIMOの伝送実験を実施しました。衛星に搭載した複数のアンテナから同一周波数で複数の信号を送信し、複数の地上局で受信した信号を分離することで、MIMO伝送の効果を検証しました。
 その結果、送受信アンテナを1台ずつ用いる従来のSISO伝送※10と比較して、2026年5月5日の2×2 MIMO実証実験では伝送容量が平均約1.94倍、2026年5月24日の3×3 MIMO実証実験では平均約2.67倍となり、アンテナ数を増やすことによる大容量化効果を確認しました。
 さらに、NTT・JAXAが生成した低軌道衛星MIMOの通信路モデルを用いて、衛星の軌道シミュレータから、今回の実験のチャネル容量のシミュレーション値を算出しましたところ、実測値と変動トレンドの一致を確認しました。これにより、衛星のような軌道予測が可能な通信システムにおけるMIMO技術の、伝送容量の挙動パターンを事前に把握可能であることを確認し、例えばシステム構築の際に、想定する衛星の軌道情報に基づいて、衛星アンテナ数、衛星地上局アンテナ配置を解析的に設計することで、安定的な伝送容量向上を実現できることが期待できます。


図2.MIMO伝送とSISO伝送の伝送容量比較
※伝送容量が高いほど、通信でより多くのデータを送信できることを示します。

IoT試験の結果速報
 地上の異なる2地点から同一周波数・同一方式のIoT端末から信号を同時送信し、衛星上で受信した信号の復調実験を実施しました。受信信号では2端末からの信号が重なっていることが観測されましたが、各信号に対して信号処理および復調処理を適用した結果、良好に分離することができました。この結果から、2地点のIoT端末が衛星と同一時間・同一周波数で通信できることを確認しました。


図3.IoT受信信号点の様子

5.今後の展開
 2026年3月から約1年間の定常運用を継続し、衛星MIMO/IoTの実証実験を行い、技術の優位性を定量的に示すことで、技術確立をめざします。低軌道衛星MIMO技術は、送受信アンテナ数の異なる条件の実験を様々な衛星パスで複数回行い、統計的な大容量化効果を評価します。衛星センシング技術は、様々な条件でIoT端末の送信実験および電波環境試験を行い、技術の適用条件を確立します。
 低軌道衛星MIMO技術およびIoT技術を確立することで、衛星通信の大容量化と小型端末の大規模収容の実現が可能です。また観測衛星の高精細な画像・レーダー情報の取得が可能となり、気象情報、地形変化、海洋観測、災害予測などの観測精度の向上に寄与します。さらに、IoT技術により地上基地局が不要となることで、インフラ設備の点検、環境モニタリング、スマートメータ等で用いられるIoTサービスを低コストかつ広域に展開することが期待できます。

6.関連する過去の報道発表
・2019年11月5日「NTTとJAXA、地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現に向けた共同研究を開始」
( https://group.ntt/jp/newsrelease/2019/11/05/191105c.html )
・2020年5月29日「「低軌道衛星-地上間の20Gbps超通信と超広域なIoTデータ収集」実現に向けた技術実証案が革新的衛星技術実証テーマとして採択~世界初の低軌道衛星MIMO技術等の軌道上実証~」
( https://group.ntt/jp/newsrelease/2020/05/29/200529a.html )
・2023年2月10日「低軌道衛星MIMO技術を活用した衛星センシングプラットフォームの軌道上実証への挑戦~全世界あらゆるものが繋がる超広域省電力センシング環境の実現に向けて~」
( https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/02/10/230210a.html )
・2026年4月15日「低軌道衛星MIMO技術と衛星センシング技術の軌道上実証実験開始~海洋・山間部など地上通信網が整備されていない地域でのIoT活用や高精細観測の高度化に貢献~」
( https://group.ntt/jp/newsrelease/2026/04/15/260415a.html )

【用語解説】
※1:MIMO(マイモ:multiple-input multiple-output)
無線通信において、送信機と受信機の双方が複数のアンテナで通信を行い、伝送容量を向上させるための技術
※2: JAXA革新的衛星技術実証4号機(小型実証衛星4号機)の打上げ結果  (外部サイト)
URL:https://www.jaxa.jp/press/2025/12/20251214-1_j.html
※3:「NTT C89」は、NTT株式会社の商標です。
 「NTT CONSTELLATION 89 PROJECT」の略称であり、社会へのソリューション提供を通じて宇宙関連事業の拡大および宇宙産業全体の発展に貢献していく取り組みです。
本リリースは、NTTグループ各社等が展開する宇宙ビジネスのブランド「NTT C89」の取り組みの1つです。
URL:https://group.ntt/jp/aerospace


※4: NTT R&D FORUM 2026
URL:https://www.rd.ntt/forum/2026/


※5:NTTとスカパーJSAT、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業のための業務提携契約を締結
URL:https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/05/20/210520a.html
※6:NTTとスカパーJSAT、株式会社 Space Compassの設立で合意 ~持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業をめざして~
URL:https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/04/26/220426a.html
※7:NTTとJAXA、地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現に向けた共同研究を開始
URL:https://group.ntt/jp/newsrelease/2019/11/05/191105c.html
※8:NTT技術ジャーナル 特集 宇宙統合コンピューティング・ネットワーク 「衛星センシングプラットフォーム」
URL:https://journal.ntt.co.jp/article/19891
※9:LPWA(Low Power Wide Area)
無線通信において、低消費電力、低ビットレート、広域カバレッジを特徴とするデータ通信
※10: SISO(サイソ:single-input single-output)
無線通信において、送信機と受信機の双方が1台のアンテナで通信を行う技術

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この企業の情報

組織名
NTT株式会社
ホームページ
https://group.ntt/jp/corporate/overview/
代表者
島田 明
資本金
93,800,000 万円
上場
東証プライム
所在地
〒100-8116 東京都東京都千代田区大手町一丁目5番1号大手町ファーストスクエア イーストタワー
連絡先
03-6838-5111

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