新種は、遠い熱帯雨林や深海だけで見つかるわけではありません。本研究は、日本の身近な海岸にも、一般的な昆虫採集では見落とされてきた小さな生きものがいることを示しました。数メートルの場所の違いや、昼と夜、季節の違いに目を向けると、海辺はまだ知らない昆虫に出会える野外の研究室になります。特定の時期や時間帯にしかいない種もいることから、見つかっていない海のガガンボは沢山いると考えられます。皆さんも海岸で昆虫の新種を探してみてください。
ナギサガガンボは、現在のところ限られた産地の狭い場所からしか見つかっていません。海岸整備や踏みつけなどの影響を受ける可能性があるため、分布域と生活史を明らかにし、生息地を含む海岸環境を守ることが重要です。
幼虫・蛹を探し、季節ごとの姿を観察し、仲間の系統関係を調べることで、「淡水や陸で暮らしていた昆虫は、どうやって海辺の塩分や水没に適応したのか」という大きな謎に近づけると期待されます。
本研究は文部科学省「教育関係共同利用拠点」事業支援のもとで行われたものです。
【用語説明】
注1)ガガンボ:
ハエ目(双翅目)に属する昆虫の一群。細長い体と長い脚をもち、多くの種の幼虫は水辺や湿った環境に生息する。成虫は数週間から数カ月しか生きられず、人を刺すことはない。
注2)イソガガンボ亜属:
ヒメガガンボ科ナミヒメガガンボ属に含まれる亜属 Dicranomyia (Idioglochina)。知られている種はすべて海岸に関連し、インド洋・太平洋沿岸を中心に分布する。本研究では新和名として「イソガガンボ亜属」を提唱した。
【論文情報】
雑誌名:Species Diversity
論文タイトル:Two littoral species of Dicranomyia (Idioglochina) (Diptera: Limoniidae) from Japan: a new species and transfer of D. monostromia with notes on ecology
著者:Naoto Jimi, Satoshi Shimooka (名古屋大学)
DOI: 10.12782/specdiv.31.271
URL: https://doi.org/10.12782/specdiv.31.271
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