株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦、以下「日建設計」)は、都市のみどりが人の行動や体験に与える影響を評価・可視化する手法「みどりのものさし
(R)社会価値編」を策定しました。人流データや緑視率、来訪者データ、SNSデータを活用し、「交流・滞在の増加」「ウェルビーイングの向上」「まちの回遊性促進」「地域魅力度の向上」「QOLの向上」の5つの評価指標から、都市のみどりの社会価値を捉えます。
さらに本手法を「グラングリーン大阪」に適用し、人々の滞在や回遊、来訪者の居住地の広がり、都市空間に対する評価などに見られる傾向を検証しました。なお、「社会価値編」は、環境・社会・経済の3つの側面から都市のみどりの価値を捉える「みどりのものさし
(R)」において、2024年に発表した「環境価値編」に続く第2弾です。
「みどりのものさし
(R)社会価値編」
https://www.nikken.jp/ja/dbook/midori_no_monosashi_social/
都市のみどりは、さまざまな社会価値を創出すると考えられてきました。一方で、その価値は定性的に語られることが多く、人の行動や体験に着目して客観的に評価・可視化する手法は十分に確立されていませんでした。日建設計はこうした課題に着目し、「みどりのものさし
(R)社会価値編」を策定しました。本手法では、人流データや緑視率、来訪者データ、SNSデータなどの観測データを活用し、都市のみどりがもたらす社会価値を客観的かつ定量的に評価・可視化します。
※本プレスリリースにおける「緑」「緑化」「みどり」は、屋上緑化や壁面緑化など物理的に植物を増やすだけでなく、環境保全や持続可能な社会創造を実現する緑豊かな都市のオープンスペース創出を含む概念として表現しています。
■策定の背景
「みどりのものさし
(R)」第1弾「環境価値編」により、都市のみどりがもたらす環境価値を評価・可視化してきた日建設計は、都市のみどりの価値をより多面的に捉えるため、新たに「社会価値編」を策定しました。環境価値に加え、人々の交流や滞在、心身の健康、まちの回遊性、地域への愛着など、人の行動や体験に現れる変化を定量的に把握することで、みどりの価値をこれまで以上に多面的に捉え、都市計画やまちづくりにおける意思決定への活用を目指します。
■「みどりのものさし(R)社会価値編」の特長
都市のみどりが人の行動や体験に与える影響を、観測データから捉えることを特長としています。
既往研究や国内外の知見を踏まえて、「交流・滞在の増加」「ウェルビーイングの向上」「まちの回遊性促進」「地域魅力度の向上」「QOLの向上」の5つを評価指標として設定。人流データ、緑視率、来訪者データ、SNSデータなど、社会価値を把握するために適した観測データを組み合わせることで、都市のみどりが生み出す社会価値を複数の視点から評価・可視化し、その結果から、都市のみどりの計画や整備、運営・管理などに活用することを目指しています。
■ 「みどりのものさし(R)社会価値編」5つの評価指標
「みどりのものさし(R)社会価値編」の5つの評価指標
■「みどりのものさし(R)社会価値編」をグラングリーン大阪へ適用
日建設計では、「みどりのものさし
(R)社会価値編」を用いて、都市公園を中核とした大規模複合開発「グラングリーン大阪」を対象に、都市のみどりが創出する社会価値を評価・可視化しました。その結果、交流・滞在、ウェルビーイング、まちの回遊性、地域魅力度、QOLの5つの評価指標について、人々の行動や体験に現れる変化や傾向を、複数の観測データから明らかにしました。
1. 交流・滞在の増加
人流データ
※1を用いて、公園内における人々の滞在・交流の状況を分析しました。
人流データの移動速度から算出した「滞在係数」の分布では、うめきた公園の「ノースヒル周辺」「ステッププラザ」「芝生広場」「大屋根施設」などのエリアで滞在が多くみられ、各エリアで休憩、食事、会話、遊び、花見などの多様な活動が確認されました
※1。
都市のみどりが、人々の多様な滞在や交流を支える場として機能していることが確認されました。
2. ウェルビーイングの向上
人の視界に占める緑の割合を示す「緑視率」と滞在状況の関係を分析しました。緑視率30%以上のエリアでは、平日・休日ともに滞在者が多い傾向があることが確認されました。緑豊かな空間が快適な滞在環境を創出し、利用者のウェルビーイングや心身の健康の向上につながることが示唆されました。
3. まちの回遊性促進
人流データ
※1を用いて、公園を起点とした来訪者の回遊行動を分析しました。開業後は梅田周辺における回遊範囲が広がり、多様な年代・性別の来訪者が周辺商業地まで回遊していることが確認されました。公園を中心とした緑空間が周辺エリアへの人の流れを創出し、まち全体のにぎわいや都市活動の活性化に寄与していることが示されました。
4. 地域魅力度の向上
来訪者の居住地データ
※2を分析した結果、開業前は28都道府県からの来訪が確認されていたのに対し、開業後は46都道府県へ拡大しました。また、地域魅力度指数
※3も向上しており、より広域から来訪者を集める傾向が強まったことが確認されました。都市のみどりが地域の魅力向上や広域からの誘客、地域内外の交流機会の創出に貢献していることが
うかがえます。
5. QOLの向上
SNSデータ11,965件を分析
※4した結果、「グラングリーン大阪の魅力と癒し」「家族・友人との楽しい時間」「自然とのふれあい・食事・散歩による心の癒し」「シビックプライド」「生物多様性の豊かさ」の5つのテーマが抽出されました。都市のみどりをめぐり、心地よさや癒し、家族・友人との時間、自然とのふれあい、地域への愛着など、QOL
向上につながり得る肯定的な体験や評価
が確認されました。
■今後の展開
「みどりのものさし(R)」による都市のみどりの価値評価
「環境価値編」では自然・環境への効果、「社会価値編」では人の行動や体験への影響を捉え、今後策定する「経済価値編」では、経済活動や不動産価値、生産性、イノベーションなど、経済にもたらす価値の評価を進めます。これら環境・社会・経済の3つの側面から、都市のみどりの価値を総合的に評価できる「みどりのものさし
(R)」の構築を目指します。
「社会環境デザイン」を掲げる日建設計では、都市のみどりが持つ価値を多角的に評価・可視化し、その価値を分かりやすく社会へ伝えることで、質の高い緑の創出と持続可能な都市・社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。
■日建設計について
日建設計は、建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東で様々なプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。
URL:
https://www.nikken.jp/ja/
※1:Agoop ポイント型流動人口データ
※2: KDDI・技研商事インターナショナル「KDDI Location Analyzer」
※3:近藤恵介(2024)「人流データに基づく地域魅力度指数の提案」RIETI Policy Discussion Paper Series, 24-P-005, 独立行政法人経済産業研究所
※4: SNS上の公開投稿データをもとに、株式会社日建設計総合研究所が複数の投稿を集計・分類し、分析結果として整理したものであり、個別投稿の引用ではありません。