日本の文化、政策、医療、福祉、ビジネスの関係者と意見交換
英国の公的な国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシル(所在地:東京都新宿区、駐日代表:ジェフ・ストリーター)は、2015年4月13日(月)~17日(金)の5日間、英国より、高齢社会の課題に関わる文化・政策関係者14団体16人を招へいします。日本滞在中、文化芸術、政策、福祉、医療、ビジネスの関係者と意見交換を行います。4月16日には国立新美術館(東京都港区)にて開催される「フューチャー・セッション:高齢社会における文化芸術の可能性」に参加します。本事業を通して、日本における高齢者を取り巻く状況や文化芸術の持つ可能性や日英協働について議論を深めることを目指します。
現在の英国の65歳以上人口は1千万人で、2050年までに倍近くの1千900万人になると予測されています(*1)。日本と同様に少子高齢化が急速に進む中、英国では近年、文化芸術団体により高齢者を対象とする多様な取り組みが展開されています。文化芸術セクターにおいても様々な取り組みが展開されています。来日団体のひとつ、ナショナル・リバプール・ミュージアムは自身のコレクションを活用し、認知症患者とその介護者を対象にしたプログラム「ハウス・オブ・メモリーズ」を実施しています。マンチェスターを拠点とするオーケストラ、マンチェスター・カメラータは、演奏家が音楽療法士と連携しながらケアホームの高齢者を対象にした曲作りの事業を展開しています。こうした文化芸術機関による事業は、大学機関などとの協働のもと効果測定も行われ、高齢社会の課題解決に向けた効果も実証されています。医療や福祉といった既存のサポートに加えて、高齢社会の課題に新たな切り口でアプローチできるものとして、大きな注目が集まっています。
英国内だけでなく、世界的な高齢化に伴う深刻な社会課題に対応するため、医療、介護だけでなくすべてのセクターがコミットし、国の垣根を越えた協働を進めていくことが求められています。
日本でも2020年までに人口の約30%が65歳以上になると予想され(*2)急速に少子高齢化が進んでいます。医療費の増加や生産人口の減少に加え、認知症患者の増加、介護者の疲弊、老人の孤立など様々な課題が浮かび上がっています。同時に、いかに健康寿命をのばし、人々が長寿で幸せな人生を送ることができるのか、国や地方自治体だけでなく民間主導で分野を横断した様々な動きがはじまっています。2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機にあらゆる人が芸術文化に親しめる環境作りや、文化芸術機関の社会的役割を再考する動きも広まり、少子高齢社会に向けた取り組みへの関心も高まってきています。
ブリティッシュ・カウンシルは、この度の英国関係者の招へい事業により、芸術のジャンルやセクターの枠組みを超えて、日本の文化関係者とともに、高齢者を取り巻く状況や文化芸術の持つ可能性について議論を深めます。未来への「問い」や知識を共有することで新たな関係性の構築、パートナーシップやコラボレーションの機会を探ります。
■来日日程:2015年4月13日(月)~17日(金)
■主催:ブリティッシュ・カウンシル
■助成:ベアリング財団、カルースト・グルベンキアン財団
*1:英国House of Commons Library 2010年資料より
*2:総務省統計局 平成25年9月発表資料より
■参考資料
●来日する英国の文化芸術関係者
<文化芸術機関>
○アーツ・フォー・ヘルス・コーンウォール ジェーン・ハワード(ディレクター)
2001年の設立以来、英国有数の芸術・保健機関として、創造力を通じた健康と福祉の向上に尽力。病院、介護用住宅から個人の自宅に至るまで、数多くの刺激的なプロジェクトを通じて、高齢者との活動を進化・発展させ続けている。
○イコール・アーツ アリス・スウェイト(ディレクター)
高齢者にアートをより身近に感じてもらい、芸術活動に積極的に参加してもらうことを目指す非営利団体。様々な参加型のアート・プロジェクトを通して高齢者の孤立を防ぐ活動をしている。
○ウィグモア・ホール ケイト・ウィテカー(教育部門 『ミュージック・フォー・ライフ』プロジェクトマネージャー)
ロンドンのウェストエンドに位置する、世界有数のコンサートホール。高齢者向けプログラムとしては介護施設で認知症と共に生きる人々とその介護者のためのインタラクティブな音楽ワークショップ・プログラムを実施。
○ウェスト・ヨークシャー・プレイハウス ニッキー・テイラー(コミュニティ・デベロップメント マネージャー)
年間の観客数が400万人を超える英国でも最大規模の劇場。演劇作品の制作に加えて、創造性を刺激するワークショップやコミュニティー活動、教育プログラムを積極的に展開。高齢者との活動にも力を入れている。
高齢者向けプログラムの事例: 「ヘイデイズ」
55歳以上の人々を対象に週に1度行われるクリエイティブ・プログラム。高齢者が創造性を最大限発揮できる場を提供。劇場による定期的な高齢者参加プロジェクトとしては英国最大規模を誇る。ヘイデイズ(Heydays)とは全盛期を意味する。
○エンテレキー・アーツ デービッド・スレイター(ディレクター)
ロンドン南東の地域社会に深く根付いた参加型アート・プロジェクトを展開する団体。過去25年間、幅広い年齢の様々な能力をもつ人々に対して、彼らの人生に変化を起こすような活動を通して、独自の手法を培ってきた。
サドラーズ・ウェルズ ジェーン・ハケット(クリエイティブ・ラーニング部門 プロデューサー兼プログラム担当)
世界有数のコンテンポラリー・ダンス劇場。ロンドンの3つの劇場で英国および世界最高レベルのダンスを観客に提供している。
高齢者向けプログラムの事例: 「カンパニー・オブ・エルダーズ」
63~92歳のメンバーで構成されるダンス・カンパニー。有名振付家によるダンス作品を、地域ベースの小劇場から国際的な劇場まで、大小さまざまな舞台で公演している。同カンパニーは世界各国をツアー公演し、ベネチア・ビエンナーレなどのフェスティバルにも参加した。英国内外のメディアでも数多く取り上げられている。
○ナショナル・ミュージアムズ・リバプール キャロル・ロジャーズ(エデュケーション・ビジター部門 エグゼクティブディレクター)
毎年270万人以上の来館者が訪れる、美術館、博物館などの8つの施設で構成されるミュージアム。イングランド内でロンドン以外に拠点を置く唯一のナショナル・ミュージアムでもある。
高齢者向けプログラムの事例: 「ハウス・オブ・メモリーズ」
認知症に対する正しい理解を広め、ミュージアムのコレクションを活用する革新的な方法を介護セクターに提供するプログラムとして2012年にスタート。プログラムを構成するものとして、以下3つの主要プログラムがある。1)演劇の手法を活用し、認知症の基礎知識や認知症と診断された人々の家族が直面する困難を紹介する「トレーニング・デー」、2)嗅覚、聴覚、触覚など多感覚を刺激するさまざまなオブジェクト、世代間の比較ができるようなアイテムを詰め認知症患者と介護者の間の会話をポジティブに促す「スーツケース・オブ・メモリーズ」、3)リバプールおよび英国全域に関する記憶と関連性のある多様なコンテンツにアクセスできるデジタル・iPadやその他のタブレット型端末のためのデジタル・メモリー・リソース「マイ・ハウス・オブ・メモリーズ」。
○マンチェスター・カメラータ ニック・ポンシロ(ラーニング&パーティシペーション部門長)
世界トップクラスの音楽家が所属する英国有数の室内管弦楽団。コンサートをはじめ、次世代とのコラボレーションや認知症の人の生活の質の向上など、さまざまな方法で人々との結び付きを深めている。
高齢者向けプログラムの事例:ミュージック・イン・マインド
自宅または介護施設で暮らす認知症の人とその介護者を対象にした先駆的プロジェクト。参加者は、音楽療法士やオーケストラ演奏者と共に、創造的な音楽作りに取り組む。アルツハイマー協会や大学機関などとの協働で実施され、現場での実践と同時に、プロジェクトのインパクトに関する研究評価が行われている。本プロジェクトと並行して、マンチェスター大学およびランカスター大学との共同プロジェクトとして、認知症の人が音楽に触れた時、脳内でどのような反応や変化が起きるかをリアルタイムで計測する多感覚音楽評価ツールの制作に取り組んでおり、実現すれば世界初となる。
○マンチェスター博物館/ウィットワース美術館 エスメ・ウォード(ラーニング&エンゲージメント部門長)
「エイジ・フレンドリー・シティ」を掲げるマンチェスター市を拠点に、質の高いラーニングプログラムを展開。高齢者向けとしては、認知症患者と家族や介護者を対象に、博物館訪問をフルサポートする月例プログラムなどを展開。
○ルミネイト アン・ギャラハー(ディレクター)
スコットランドで毎年開催される高齢者のためのフェスティバル。ダンス、演劇、音楽、美術、工芸、メディア、アウトリーチなどの幅広いプログラムを実施。2014年にはスコットランド全域で435にのぼるイベントが開催された。
<研究機関>
○キール大学 ミリアム・バーナード(老年社会学センター長・教授)
1949年にノース・スタッフォードシャー・ユニバーシティ・カレッジとして設立。キール大学に併設された老年社会学センターは、設立時から高齢化と人の晩年についての社会的および批評的分析に焦点をあてた幅広いプロジェクトを実施。
<政策・助成機関>
○アーツ・カウンシル・イングランド フィリップ・ケーブ(エンゲージメント部門 ディレクター)
「あらゆる人に素晴らしい文化芸術を(Great Art for Everyone)」をミッションに掲げ、人々の生活を豊かする文化芸術活動を推進、支援。支援先は文化機関、ミュージアム、図書館など多岐に渡り、その活動は演劇から、デジタルアート、読書、ダンス、音楽、文学、工芸、コレクションまでさまざまである。近年「高齢者とアート」をテーマにした助成プログラムをベアリング財団とともに立ち上げた。
○カルースト・グルベンキアン財団 イザベル・ルセーナ(プログラムマネージャー)
文化、教育、社会、科学などの助成を目的として1956年にポルトガルで創設。本部をリスボンに置き、ロンドンとパリに支部がある。英国支部は、国や地域、学問、産業などの領域を越えて知識や経験を共有し、社会的、文化的、環境的価値をもたらす関係を築くことにより、とりわけ弱い立場にある人たちのウェルビーイングを長期にわたって支え、状況を改善することを目的としている。
○ベアリング財団 デービッド・カトラー(代表)、デービッド・サンプソン(副代表)、ケイト・オーガン(芸術アドバイザー)
1969年に設立された民間の助成団体。差別や社会的弱者に関わる課題にアプローチし、強固な市民社会を形成することを目的に活動している。 英国の4つのアーツ・カウンシル(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)と共同で、英国全土の文化芸術団体やアーティストによる高齢者を対象にした取り組みを支援している。
●日本滞在中の一般公開イベント
○サロンセッション:「クロスセクターで創る認知症フレンドリーな社会」~日英の事例から~
概要:
「クロスセクターで創る認知症フレンドリーな社会」をテーマに、日本と英国の先進的な取り組みの事例紹介も兼ねた意見交換会。スピーカーとして企業やセクターの壁を越えて活動している日本の関係者も参加。
日時: 2015年4月15日(水)14:00-16:30(13:30 受付開始)
会場: 3331 アーツ千代田、1階 コミュニティスペース(〒101-0021 東京都千代田区神田6-11-14)
参加費: 無料(通訳付き)
定員: 30名様
主催:ブリティッシュ・カウンシル
共催:認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ
○フューチャー・セッション:高齢社会における文化芸術の可能性
概要:
フューチャー・セッション(*3)形式のフォーラム。英国で展開されているプロジェクト事例の紹介のほか、芸術のジャンルやセクターの枠組みを超えた新たな関係性の構築、パートナーシップやコラボレーションの機会を探ります。
日時: 2015年4月16日(木)13:30-17:00(13:00 受付開始)
会場:国立新美術館 3階 講堂(〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2)
参加費:無料(通訳つき)
定員: 80名(先着順)
主催:ブリティッシュ・カウンシル
協力:国立新美術館
対象者:文化芸術関係者、政策関係者、医療福祉関係者など
ファシリテーター:野村 恭彦(株式会社 フューチャーセッションズ 代表取締役社長)
*3:“フューチャー・セッション”は、多様なステークホルダーが既存の枠組みを超えて集まり、参加者同士がオープンな対話を通して未来の価値を生み出す場です。
以上
ブリティッシュ・カウンシルは、1934年に設立された英国の公的な国際文化交流機関です。世界100以上の国と地域で英国と諸外国の文化交流活動を推進しています。日本では60年以上の歴史を誇り、教育と文化を通じて、英国と日本を結ぶ架け橋になることを目指しています。ウェブサイト: www.britishcouncil.or.jp
- 本件に関するお問合わせ先
-
ブリティッシュ・カウンシル
広報・マーケティング部
162-0825:東京都新宿区神楽坂1-2
E-mail:pr@britishcouncil.or.jp