研究成果発表 「自分の声」と「他人の声」を識別する音響学的特徴を解明

首都大学東京

~思春期における自己像形成の理解に向けて~
首都大学東京大学院 人文科学研究科 萩原裕子教授の研究グループ

首都大学東京大学院 人文科学研究科 萩原裕子教授の研究グループは、「自分の声」の識別に関する音響学的特徴を明らかにするために、音声の基本周波数注1)と周波数帯域を操作した結果、母音や子音の情報を形成するフォルマント注2)の影響が大きいことを明らかにしました。 私たち人間の「声」は個人により違いがあり、「顔」とともに個人を同定する手がかりになると 考えられます。複数の他人の声を識別するのと同様に、自分の声を他人の声から識別することもできますが、どのような音響学的特徴が「声の自己像」をなしているのかについてはあまり知られていませんでした。今回、音声の高さや構造といった特徴について調べたところ、「声」の認識全般には高さや母音が重要な役割を担っており、それらの情報が制限されている状況では、「他人の声」よりも「自分の声」の方が認識しやすいことが分かりました。この結果は、言語による精神機能の自己制御の神経基盤解明の基礎資料となるもので、健全な精神発達の基盤である「自己像」の形成過程の理解と、自己像に問題を抱える精神疾患の病態解明への貢献が期待されます。 この研究は、文部科学省科学研究費新学術領域研究(研究領域提案型)「精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学」(領域代表者 東京大学医学部教授 笠井清登)(平成23年7月~平成28年3月)の一環として行われ、本研究成果は、2013年10月11日に米国の国際科学誌「Frontiers in Psychology (Language Sciences)」(オープンアクセス誌)に掲載されました。 注1) 基本周波数 音声においては、発声時に声帯が振動する際の基本周波数(F0)をさし、聞こえとしては声の高さに対応する。日本語ではアクセントやイントネーションのような要素を構成する。本研究では、元となる音声に含まれる基本周波数の時間的な変化パターンは保持したまま、音程を上げる、もしくは下げるという操作を加えている。 注2) フォルマント 声帯から口唇までを発声時に音波が通る体腔であるとした場合に、その経路の音響特性によって決まる共振周波数が音声のスペクトル上でピークとして現れる。ピークを示す周波数の低い方から順に第1フォルマント(F1)、第2フォルマント(F2)、…と呼ぶ。 研究内容の詳細等は、『リリースPDF』を参照ください。 http://digitalpr.jp/pdf.php?r=5702
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首都大学東京大学院 人文科学研究科 言語科学教室
1920397:東京都八王子市南大沢1丁目1
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