バクスターの低ブドウ糖腹膜透析処方が糖尿病透析患者の糖・脂質管理に良好な効果

バクスター株式会社

糖尿病性腎症患者における心血管リスクを低下させる可能性

本資料は、米バクスターインターナショナルインクが2012年5月25日(現地時間)に発表しましたプレスリリースを日本語に翻訳再編集し、皆様のご参考に供するものです。日本で未承認の製品については英語表記のままとしています。本資料の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先します。詳細は http://www.baxter.com をご参照ください。 2012年5月25日、フランス・パリ発 バクスターインターナショナルインク(NYSE: BAX)は、腹膜透析療法に関する2つの大規模多施設国際共同試験の結果を本日発表し、低ブドウ糖腹膜透析処方が糖尿病性末期腎不全患者の血糖および脂質を含む代謝管理に良好な効果があることを明らかにしました。この2試験の総合的な結果は、欧州腎臓学会・欧州透析移植学会(European Renal Association - European Dialysis and Transplant Association, ERA-EDTA)の第49回年次総会において、発表されました。 IMPENDIA試験とEDEN試験の総合結果では、成人の糖尿病性腹膜透析患者において、低ブドウ糖腹膜透析処方が、臨床的および統計的に有意な血清HbA1c値(血糖管理に用いる標準的なマーカー)の低下をもたらすことが明らかになりました。血清トリグリセリド(血液中の脂質の一種)、VLDLコレステロール、アポリポ蛋白B(LDLコレステロールの合成に関与する蛋白)を含む特定の脂質パラメータの有意な低下も確認されました。 「これらの試験により、糖尿病性腹膜透析患者の血糖および脂質の管理において、低ブドウ糖腹膜透析処方が有益である可能性が確認されました。糖尿病患者の腹膜透析療法においては、低ブドウ糖腹膜透析処方が検討されるべきです」と、トロント大学医学部教授で演者を務めた、ユニバーシティ・ヘルス・ネットワークのジョアン・バーグマン医学博士(Joanne Bargman, MD)は述べています。 多くの先進国では、新規の末期腎不全患者の25~50%が糖尿病由来です(1,2,3)。末期腎不全患者は心血管疾患のリスクが高く、そのリスクを低下させることが重要です。とくに糖尿病性末期腎不全患者の治療においては、そのリスクの低減が重要な焦点となります。標準的な透析療法では、腹膜透析患者は高濃度のブドウ糖に暴露されます。 ■IMPENDIA試験およびEDEN試験について IMPENDIA試験およびEDEN試験は、4大陸11ヵ国55施設の251人の腹膜透析患者を対象に無作為化比較試験として実施され、低ブドウ糖腹膜透析処方による代謝管理の効果を6ヵ月間評価しました。両試験を総合すると、124人が低ブドウ糖腹膜透析処方による治療群に無作為に割り付けられ、「PHYSIONEAL」(ブドウ糖)、「エクストラニール」(イコデキストリン7.5%)、「NUTRINEAL」(PD4アミノ酸1.1%)の併用療法か、「ダイアニール」(PD4ブドウ糖液)、「エクストラニール」、「NUTRINEAL」の併用療法のいずれかが行われました。対照群に割り付けられた127人には、「ダイアニール」の単独療法が行われました。主要評価項目は、HbA1c値の開始時からの変化の群間比較です。また、副次的評価項目として、血清脂質値の変化などを評価しました。両試験を複合解析することは、プロトコールにより定められています。 試験の結果、低ブドウ糖腹膜透析処方群において、主要評価項目に有意な低下が認められました。低ブドウ糖腹膜透析処方群においてHbA1c値が平均0.5%低下したのに比し、対照群では低下しませんでした。血清トリグリセリド値は低ブドウ糖腹膜透析処方群が対照群より0.7mmol/L低く、VLDLコレステロール値は低ブドウ糖腹膜透析処方群が対照群より0.3mmol/L低い結果となりました。これらの結果は、統計的にも有意差(p<0.05)が認められました。 低ブドウ糖腹膜透析処方群に重篤な有害事象の増加が認められましたが、この増加はEDEN試験を実施した17施設のうち特定の2施設に起因するものでした。残りの15施設において群間差はなく、また、さらに解析した結果、IMPENDIA試験では両群の有害事象の発生率は同等でした。EDEN試験の2施設における有害事象の差異を解明するため、現在追加解析を実施しています。 ■腹膜透析療法および糖尿病について 末期腎不全患者は増加傾向にあり、糖尿病患者の世界的な増加がその一因となっています(4)。HbA1c値は、糖尿病治療における血糖管理の指標として広く用いられています。糖尿病患者のHbA1c高値は、血糖値が適切に管理されていないことを示すものであり、末期腎不全患者の主な死亡原因である心血管疾患(5,6)につながる可能性があります。 腹膜透析療法は、患者が自宅などにおいて自分で行える治療法であり、さまざまな臨床的有益性をもたらします。腹膜透析療法では、腹部のカテーテルを通して腹腔に透析液を注入します。しかし、従来の腹膜透析液では、多くのブドウ糖が体内に吸収され、糖尿病性腹膜透析患者の血糖管理が困難となる場合があります。 これらの患者においては、血中脂質濃度の悪化やメタボリックシンドローム発症率の増加などのリスク因子と相まって、全般的な心血管疾患リスクが上昇する可能性があります。低ブドウ糖腹膜透析処方は、ブドウ糖負荷と暴露を低減し、心血管疾患や糖尿病性合併症など、高血糖にともなう併存疾患の発症リスクを減少させるために開発されたものです。 「これらの試験結果は、当社の腹膜透析液に関する臨床エビデンスをさらに強化するものであり、患者さんの転帰の改善につながる画期的な治療法を追求する当社の取り組みの実例です」と、バクスターの透析製品担当バイスプレジデントであるサラ・プリチャード医学博士(Sarah Prichard, MD)は述べています。 * 「PHYSIONEAL」および「NUTRINEAL」は現在、日本では販売していません。 ■日本における慢性腎臓病と糖尿病性腎症の実態について 日本における慢性腎臓病(CKD)の患者数は1,330万人、そのうち積極的な治療が必要な患者数は600万人規模と推計されています。腎臓が徐々にその機能を失うことを慢性腎臓病といいます。しかし、重症化するまで自覚症状は少なく、本人が知らないまま腎機能が低下し、透析治療に至る危険性もあると推測されます。現在、日本では約30万人または成人約350人に1人が透析治療を受け、その数は年々増加しています。また、近年、生活習慣病患者の増加にともない、糖尿病や高血圧に起因する慢性腎臓病患者が増加しています。日本透析医学会のデータによると、透析導入患者の原疾患の第1位は糖尿病性腎症で全体の43.5%(2010年)を占めており、1990年の26.2%から20年間で大幅に増加しています。 ■バクスターインターナショナルインクについて バクスターインターナショナルインクは、その子会社を通して、血友病や免疫不全症、感染症、腎疾患、外傷などに対する医薬品・医療機器を開発および製造販売し、患者さんの救命や生命維持に貢献しています。多様性に富んだグローバルヘルスケア企業として、医薬品、医療機器、およびバイオテクノロジーの専門技術を活用し、世界の医療の向上に寄与する製品を創出します。 ■バクスター株式会社について バクスター株式会社は、腎不全、血友病、輸液、麻酔、疼痛管理の領域に特化した世界的なヘルスケアカンパニー、米バクスターインターナショナルインクの日本法人です。医薬品、医療機器、バイオサイエンステクノロジーを中心とした医療サービスを患者さんや医療現場に提供し、医療に新たな価値を創造します。 1. USRDS Annual Data Report 2011 2. ANZDATA Registry: ANZDATA Annual Report 2010 3. ERA-EDTA Registry: ERA-EDTA Registry Annual Report 2009 4. Diabetes in America. 2nd edition. National Diabetes Data Group. Bethesda, MD, National Institutes of Health, National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases, (NIH publ. No. 95–468; 1995:349-400 5. Larsen ML, Horder M, Mogensen EF (1990). "Effect of long-term monitoring of glycosylated hemoglobin levels in insulin-dependent diabetes mellitus". N. Engl. J. Med. 323 (15): 1021–5 6. McCullough PA. Coronary artery disease. Clin J Am Soc Nephrol. 2007 May 2 (3):611-6. Epub 2007 Mar 21 「Baxter」、「Dianeal」、「Extraneal」、「Nutrineal」、「Physioneal」は、バクスターインターナショナルインクの登録商標です。
本件に関するお問合わせ先
バクスター株式会社
コーポレートコミュニケーション部
TEL:03-6204-3680 

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