障害者雇用におけるミスマッチは“構造問題”にある

株式会社スタートライン

茨城県主催「身体障害者就労支援相談員研修会」にて課題と解決策を提示

障害者就業支援を通じて“誰もが自分らしく生きる社会”を目指す株式会社スタートライン (本社:東京都三鷹市、代表取締役社長:西村賢治)は、2026年6月19日(金)に開催された「令和八年度 身体障害者就労支援相談員研修会」(主催:社会福祉法人 茨城県身体障害者福祉協議会)において、障害者雇用エバンジェリストの吉田瑛史が登壇し、「Diverse Village USHIKU(ダイバース ヴィレッジ牛久)」をテーマに講演を実施しました。

本講演では、障害者雇用を取り巻く最新の市場動向と現場で顕在化している早期離職の課題を整理するとともに、ミスマッチを抑制し定着を高めるための具体的なアプローチと、茨城県牛久市における実践モデルについて紹介しました。
 

講演の背景:高い就職率の裏に存在する「定着率の壁」
現在、民間企業における法定雇用率は2.7%への引き上げが予定されており、企業における採用の必要性は一層高まっています。一方で、法定雇用率を達成している企業は46.0%にとどまり、54.0%の企業が未達成という状況にあります(※1)。

こうした中、茨城県における障害者の就職率は51.8%(※2)と東日本で最も高い水準を記録しており、雇用機会は着実に拡大しています。しかしながら、全国における就職後1年時点の定着率は約64.7%(※3)にとどまっており、約3.5割が離職に至るという構造的課題が存在しています。

本講演では、この「就職は進んでいるにもかかわらず定着しない」という現状を踏まえ、障害者雇用における質的転換の必要性について提起しました。

※1 出典:厚生労働省『令和7年障害者雇用状況の集計結果 』
※2 厚生労働省『令和6年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況』
※3 厚生労働省 『令和7年6月10日第6回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会』

 

早期離職の本質は「ミスマッチ構造」
講演では、早期離職の要因を個人の問題としてではなく、構造的に生じるミスマッチとして捉える視点を提示し、採用と就職が目的化することで、相互理解のプロセスが省略され、その結果として入社後に認識のズレが顕在化する──そうしたリスクの存在を明らかにしました。

特に問題となるのが、求人票やWeb上における情報不足です。業務内容や配慮事項、相談経路といった「働く上で意思決定に必要な情報」が十分に開示されていないことに加え、採用担当者と実際の受け入れ現場との間にも理解の乖離が見られます。

このような情報の非対称性が重なることで、入社後に「想定していた仕事内容と違う」「職場の雰囲気が合わない」といったズレが生じ、人間関係や業務適合の問題として表面化し、結果として離職につながっている構造を示しました。


解決策:自分を正しく伝える~「特性・対処・配慮」の可視化~
こうした構造に対する解決策として重要なのが、「自分を正しく伝えること」です。
スタートラインでは、その具体的な方法として「特性・対処・配慮の3点セット」による情報の可視化を提案しています。

これは単なる自己開示ではなく、マッチング精度を高めるための情報設計です。働く上での特性(何が難しいのか)だけでなく、それに対して本人がどのような対処を行っているのか、さらに企業側にどのような配慮を求めるのかを一体で整理し、選考段階から共有していきます。

重要なのは、この3点が揃うことで、企業側が「配慮すべき負担」ではなく「再現可能な働き方」として業務を設計できる点にあります。
たとえば、「マルチタスクが苦手」という情報だけでは配置判断は難しいものの、「メモを活用しながら1つずつ処理できる」という対処、「指示を1つずつ出してほしい」という配慮まで含めて共有されることで、具体的な業務設計が可能になります。

このプロセスを通じて、採用前の段階で期待値のズレが調整され、入社後のギャップを大幅に抑えることができます。結果として、就職の成立だけでなく、「働き続けられる状態」の実現につながる点に価値があると位置づけています。

 

「Diverse Village USHIKU」による実践モデル
講演では、これらの考え方を具現化した取り組みとして、茨城県牛久市との包括連携協定のもとで推進している施策の一つである「Diverse Village USHIKU」を紹介しました。

本拠点では、スタートラインが施設の構築および運営を担い、「エスカード牛久ビル」内のワンフロアにおいて、障害者雇用支援サービス サポート付きサテライトオフィス「INCLU(インクル)」、屋内農園型障害者雇用支援サービス「IBUKI(イブキ)」、ロースタリー型障害者雇用支援サービス「BYSN(バイセン)」の3つのサービスを一体的に提供しています。

利用企業に雇用された障害者は、コーヒーの焙煎業務や農産物の生産といった軽作業からオフィスワークまで、業務習熟度や適性に応じて業務を選択することが可能です。こうした設計により、一人ひとりの状態や志向に応じて役割や業務を調整できる、柔軟な働き方とキャリアの拡がりを実現しています。

さらに、文脈的行動科学(CBS)に基づく導入研修や、専門知識を持つサポーターの常駐による支援体制を整えており、個人の努力だけに依存しない働く環境を構築しています。
加えて、本取り組みを通じて、障害者の多様な働き方の創出に加え、地域との共生・共創を促進し、地域経済の活性化にも寄与していくことを目指しています。


障害者雇用の本質は「自分らしく働き続けられること」
講演の締めくくりとして、障害者雇用の本質は単なる雇用率という数値の達成ではなく、障害者が安心して自分らしく働き続けられる状態の実現にあることを強調しました。
その上で、支援者に対しては、就職の実現にとどまらず定着までを見据えた支援を行うこと、本人の特性の言語化を支援すること、そして一般就労に限らない多様な選択肢を提示することの重要性を伝えました。


株式会社スタートライン
スタートラインは、2009年創業の障害者雇用支援企業です。採用から定着までを一体で支援する独自モデルを構築し、障害者の「働く」を支援しています。
応用行動分析(ABA)や文脈的行動科学(CBS)、第三世代の認知行動療法(ACT)に基づいた支援技術を軸に、個別特性に応じた環境設計と関わり方を実装。
雇用の機会創出にとどまらず、組織や地域との関係性まで含めた持続的な働き方を実現しています。
一つでも多くの選択肢をつくり、多様な人々の可能性を拡張することで、誰もが自分らしく生きる社会を目指しています。

代表取締役社長:西村 賢治(にしむら けんじ)
本社所在地:東京都三鷹市上連雀1-12-17 三鷹ビジネスパークビル1号館
設立:2009年12月
事業内容:障害者雇用支援事業(採用支援、定着支援、コンサルティング、環境設計 等)、障害福祉事業
株式情報:東京証券取引所 グロース市場(証券コード:477A)
HP:https://start-line.jp/
 


 

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