【昭和医科大学】同じ暑さでも、熱中症リスクには個人差がある ― 働く世代約8.7万人の解析で、生活習慣や持病の重なりによる違いを確認 ―

昭和医科大学

昭和医科大学(東京都品川区/理事長・学長:上條 由美)の北園 真子医師(大学院医学研究科 衛生学公衆衛生学分野 博士課程4年)、田 啓樹講師(同分野)らの研究グループは、株式会社JMDCの医療・健診データと環境省が公表する暑さ指数(WBGT)を組み合わせ、働く世代約8.7万人を対象に解析しました。その結果、喫煙や多量飲酒などの生活習慣と、糖尿病や高血圧などの持病が多く重なる人ほど、暑さの上昇に伴う熱中症との関連が強くなることが分かりました。本研究は、熱中症予防において、気象条件だけでなく、一人ひとりの健康状態も考慮することの重要性を示唆するものです。本成果は、国際医学誌『The American Journal of Medicine』に掲載されました。 【研究のポイント】 生活習慣や持病に関する項目の累積数が多いほど、暑さ指数(WBGT)の上昇に伴う熱中症のオッズ比の増加が大きいことを確認 働く世代約8.7万人を対象とした大規模解析による、暑さと個人の健康状態に関わる要因との交互作用を確認 気象情報に加え、個人の健康状態や服薬状況も考慮した熱中症予防の重要性を示唆 【研究の背景】  近年、気候変動に伴い、熱中症を含む熱関連疾患による健康被害が世界的に増加しています。日本でも、熱中症警戒アラートなど、気象条件に基づく熱中症予防の取り組みが進められています。  一方、同じ暑さの下でも、熱中症へのかかりやすさは人によって異なる可能性があります。喫煙や多量飲酒などの生活習慣に加え、糖尿病や高血圧などの持病、服薬状況も、その違いに関係していると考えられます。  そこで本研究では、暑さ指数(WBGT)と熱中症との関連に着目し、個人の生活習慣や持病に関する項目が重なることによって、その関連がどのように変化するかを検討しました。 【研究内容と成果】  本研究では、日本の大規模レセプト・健診データベースであるJMDCのデータを用い、症例対照研究を実施しました。2018~2023年の温暖期に熱中症と診断された18~74歳の就労世代 21,724例を症例群とし、年齢・性別を一致させた 65,172例を対照群として、計86,896例を解析しました。暑さの指標には、環境省「熱中症予防情報サイト」が公表する、各都道府県の代表地点における1日の最高暑さ指数(WBGT)を用いました。  また、生活習慣や持病に関する11項目(多量飲酒、喫煙、運動習慣、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、腎機能障害、肝機能障害、脳血管疾患の既往、心血管疾患の既往)を集計し、その累積数によって、暑さと熱中症の関連がどのように異なるかを評価しました。さらに、熱中症に関連する可能性のある薬剤の処方情報も考慮しました。  その結果、生活習慣や持病に関する項目の累積数が多いほど、暑さ指数(WBGT)の上昇に伴う熱中症のオッズ比の増加が有意に大きくなることが分かりました(交互作用のオッズ比1.009、95%信頼区間1.005-1.013)。基準を「WBGT 25℃・累積数0個」とした場合、WBGT 33℃・累積数0個の群でオッズ比 2.04、累積数4個の群でオッズ比 2.66でした。  図1は、制限付き三次スプラインモデルを用いて、WBGTと熱中症のオッズ比の関係を可視化したものです。WBGTの上昇に伴い熱中症のオッズ比はおおむね上昇し、生活習慣や持病に関する項目の累積数が多い群ほど、その上昇幅が大きい傾向がみられました。 図1.暑さ指数(WBGT)と熱中症リスクの関連:生活習慣や持病に関する項目の累積数別に、1日の最高暑さ指数(WBGT)と熱中症のオッズ比の関連を示した。実線は推定値、色の帯は95%信頼区間を示す。WBGT 25℃かつ累積数0個を基準(オッズ比1.0)とし、処方情報に基づく薬剤使用を調整した制限付き三次スプラインモデルを用いた。 【社会的意義と今後の展開】  本研究は、熱中症対策において「どれくらい暑いか」だけでなく、「誰が暑さの影響を受けやすいか」という視点も重要であることを示しています。特に、働く世代の熱中症予防においては、産業保健活動や職場の暑熱対策、一人ひとりの健康状態に応じた健康管理への活用が期待されます。  今後は、個人ごとの暑さへの曝露状況に加え、屋内・屋外での活動状況や冷房の使用状況など、より詳細な情報を取り入れた研究を進めることで、実際の熱中症予防に一層役立つ知見につながることが期待されます。 【掲載論文】 論文タイトル:Heat exposure, multimorbidity, and heatstroke risk in working-age adults in Japan: a matched case-control study 掲載誌:The American Journal of Medicine DOI:10.1016/j.amjmed.2026.09.029 URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002934326006972?via%3Dihub 責任著者:田 啓樹(昭和医科大学 大学院医学研究科 衛生学公衆衛生学分野) ▼本件に関する問い合わせ先  昭和医科大学 大学院医学研究科 衛生学公衆衛生学分野 講師  田 啓樹(でん ひろき)  TEL: 03-3784-8137  E-mail: denh@med.showa-u.ac.jp ▼本件リリース元  学校法人昭和医科大学 総務部総務課 大学広報係  TEL: 03-3784-8059  E-mail: press@ofc.showa-u.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

その他のリリース

話題のリリース

機能と特徴

お知らせ