【京都産業大学】小胞体のカルシウムイオンチャネルIP3受容体の酸化還元状態に依存した新たな制御メカニズムを解明 -- 加齢性の疾患への治療法開発に期待 --



京都産業大学 永田 和宏名誉教授、大学院生命科学研究科潮田 亮准教授、大学院生の藤井 唱平らの研究グループは、小胞体のカルシウムイオンチャネルIP3受容体の酸化還元状態に依存した新たな制御メカニズムを解明した。このことは老化やアレルギー疾患、神経変性などさまざまな疾患によって生じる細胞内環境の変化とカルシウムを介したシグナル伝達の異常を結びつける重要な発見であり、病態理解から治療法解明に新たな知見をもたらすことが期待される。




 小胞体のカルシウムイオンチャネルIP3受容体は、疾患や老化といったさまざまな状況下においてチャネルの活性が変化することは知られていたが、なぜそのようなことが起こるのか、メカニズムは不明なままであった。

 永田・潮田らの研究グループは、これまでほとんど注目されてこなかったIP3受容体の小胞体内腔の領域に着目し、酸化還元状態に依存した制御によってチャネル活性が変化することを見出した。ヒト細胞内で、制御に関わるタンパク質を明らかにするため、小胞体に存在する酸化還元酵素について遺伝子欠損スクリーニングを行ったところ、活性化に必要な酸化酵素ERp46と抑制に必要な還元酵素ERdj5をそれぞれ同定することに成功した。これまで報告してきたERdj5を介したカルシウムイオンポンプSERCA2bの活性化機構とあわせて、レドックス(酸化還元)が細胞内におけるカルシウムイオン恒常性維持機構に重要な役割を果たすことがわかった。
 このことは、疾患や老化によって避けがたく生じる細胞内環境の変化と細胞内シグナル伝達異常という、病理学的にはそれぞれ個別に知られていた現象を結びつける重要な発見であり、病態理解から治療法解明に新たな知見をもたらすことが期待される。
 潮田准教授は「今回、IP3受容体からのカルシウムイオン放出量をレドックスに依存して制御する新たなメカニズムを解明した。細胞内のレドックス環境は老化とともに変化することが知られており、老化によって引き起こされる様々な疾患の治療法開発につながるのではないかと期待している」とコメントしている。



 この研究成果は、2023年5月23日(日本時間)に米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences, USA)(オンライン版)に掲載された。


むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

関連リンク
・【生命科学部】小胞体カルシウムイオンチャネルIP3受容体の酸化還元状態に依存した新たな制御機構を解明
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2023_ls/20230524_400a_ronbun.html
・小胞体局在還元酵素ERdj5の機能不全は細胞内のカルシウムイオンバランスの攪乱を招き、細胞老化の亢進、個体寿命の短縮を起こすことを解明
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2021_ls/20211105_400a_ronbun.html
・ジスルフィド還元酵素ERdj5がSERCA2bのジスルフィド結合を還元することを解明
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20161001_345_kenkyu_masu01.html
・京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科 潮田 亮准教授
 https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/ls/ushioda-ryo.html
・潮田研究室ホームページ
 https://ushioda-lab.com/


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