女性の健康力向上を通した社会の活性化への貢献を目指す『ウーマンウェルネス研究会supported by Kao』 (代表:対馬ルリ子/産婦人科医)では、新型コロナウイルス感染拡大以降の衛生習慣への取り組みに対する調査を、首都圏在住830名(20代~50代)を対象に実施しました。
調査によると、新型コロナウイルス感染拡大以降、手洗いや消毒などの衛生習慣への取り組みとして、積極的に取り組むようになったのは、(1)「マスクの着用(75.4%)」、(2)「石鹸での手洗い(64.9%)」、(3)「手指のアルコール消毒(56.3%)」。その一方で、「歯みがき」「舌洗浄・舌みがき」は、他の衛生習慣と比べて低い結果となっています。(グラフ1)
特に、「舌」のケアについては、日常的に行っている人は僅か2割に留まっています。(グラフ2)
この結果は、『感染症と口内環境の関係性』について理解している人が少ない(19%)ことに起因していると考えられます。(グラフ3)
感染症への意識が急速に高まる中、感染症と口内環境との関係や対策について、予防歯科に力を入れて診療に取り組んでいる「片平歯科クリニック」院長の片平治人先生にお話しを伺いました。
■ウイルス感染症と口内環境との関係
インフルエンザウイルスなどのエンベロープウイルス感染は、ウイルス表面にあるスパイクと呼ばれる糖タンパク突起凸と、体の細胞表面に露出している受容体凹において、鍵と鍵穴が合うように結合して細胞内に侵入して起こります。通常、口内や気道の粘膜の受容体は糖タンパクで守られていて、ウイルスの侵入を抑制する働きがあります。しかし口内のケアが不十分な場合、主に歯周病原因菌などが作り出したタンパク質を分解するプロテアーゼなどの酵素が粘膜を保護するタンパク質を破壊することで、ウイルス感染しやすい状態になってしまいます。
口内菌を除去する適切な口内ケアを行うことで、特定のウイルス性疾患(インフルエンザ)の発症率が減少し
たという研究結果※1があるように、口内菌を減らすことはウイルス感染症予防につながる可能性が考えられます。
※1 奥田克爾ほか、平成15年度厚生労働省老人保健健康増進等事業, 口腔ケアによる
気道感染予防教室の実施方法と有効性の評価に関する研究業務報告書,地域保健研究会,東京 (2004)
■口内菌は舌に6割も存在!
口内には600種類以上の菌がすみついています。個人差はありますが
口の中の菌の6割以上が舌に存在する人もいます
。(グラフ4)
舌の表面は凹凸のある絨毛構造で、殆どの人は舌の上に舌苔(ぜったい)」と呼ばれる白い苔のような菌のかたまりがついています。舌苔はバイオフィルムと言われる強固な膜のような状態で貼り付いており(参考写真1)、通常の歯みがきやうがいだけでは落ちにくいため、「舌洗浄」などの舌のケアが必要となります。
特に、秋から冬の感染症が流行しやすいこれからの季節のオーラルケアは、歯や歯茎だけでなく、「舌洗浄」などの舌ケアも取り入れたトータルクリーニングが望ましいと言えます。
■マスク着用により唾液分泌量も減少傾向に・・・
日常的にマスク着用することで口呼吸になっていたり、また、会話が少なくなることで舌を動かす回数が減って
いることが、唾液分泌量に影響を及ぼしている可能性があります。唾液には口の中を清潔に保つ働きがあります。
唾液分泌量が低下することで、口内菌が繁殖しやすくなり、舌苔が蓄積しやすい環境を招いていることが考えられます。舌苔の状態は体調によって変化するので、
鏡で日々
自分の舌苔の状態をチェックしてみましょう。
左の写真は舌苔が殆どない状態で、右に進むに従って舌苔が厚く蓄積した状態となります。
口内環境を良好に保つためにも、舌のケアを日常的に取り入れましょう。
■「舌洗浄」などの舌ケアと唾液腺マッサージで口内環境の改善を!!
1.舌ケアをはじめましょう。直接ケアする泡ハミガキの「舌洗浄」も効果的
うがいやマウスウオッシュだけでは、舌ケアの効果は期待できません。口内菌は、菌同士がラグビーのスクラムを組むように固まり、バイオフィルムという菌のかたまりを作ります。バイオフィルムは台所のヌメリのようなものなので、うがいだけでは除去することができません。舌の菌のかたまり「舌苔」は、歯ブラシでこすってしまうと、舌を傷つけてしまう恐れがあるので、舌用のケア製品でお手入れしましょう。
舌苔が厚く、広い範囲に蓄積してしまっている場合は舌用ブラシを使用しましょう。舌用ブラシを使用する場合は舌をベーっと前に突き出し、力を入れ過ぎないように奥から舌先に向けて舌ブラシで掻き出します。また、指にガーゼを巻いてやさしく拭うなどの方法で除去するのも効果的です。
その他の方法として、泡を舌に直乗せする泡タイプのハミガキもおすすめ
です。
舌に直接、きめ細かい泡状の「泡ハミガキ」をのせて、口全体に行き渡らせることで、舌の奥や頬の粘膜まで泡が行き届き、多くの菌を吸着することで、舌の上だけでなく口内全体が洗浄されます。(データ1)
舌ケアを行う適切なタイミングは「朝」と「夜」の1日2回です。
就寝中は口呼吸などで唾液の分泌量が減少し、口内菌が最も増加しやすくなります。(データ2)
口内菌の数が最も多くなる起床後の朝の歯磨きは「舌洗浄」のベストタイムです。起床後と就寝前の朝と夜の歯磨きに「舌洗浄」を取り入れましょう。
2.お口の強力サポーター“唾液”を促す、3つのマッサージ
唾液は口内の健康を守るためにたくさんの働きをしています。唾液の分泌量が低下すると、口内環境が乱れやすくなります。
耳の下にある「耳下腺(じかせん)」、あごの内側にある「顎下腺(がっかせん)」、あごの下にある「舌下腺(ぜっかせん)」の3つの唾液腺をやさしくマッサージすることで、唾液の分泌が促されます。
マスク着用で舌を積極的に動かす機会が少なくなってきている時期にこそ、唾液腺マッサージや舌の運動を意識的に取り入れましょう。
監修:片平 治人(かたひら はると)
<プロフィール>
片平歯科クリニック 院長
鶴見大学歯学部を卒業後、東京医科歯科大学歯学部付属病院での臨床研修を経て、1997年に片平歯科クリニックを開業。2003年に医療法人社団康治会設立、2017年昭和大学大学院医学研究科修了(博士(医学))
<クリニックのコンセプト>
心身の健康の基本である「美しい口元」「美味しく噛む」「快適な睡眠」の実現に向けたトータルケアを目指し、日々の診療にあたっています。「生まれもったお口の機能の大切さ」を尊重し、当院の歯科医師、歯科衛生士がTeamで患者さん一人ひとりの口腔内環境とライフステージに応じた最適な歯科治療および予防処置を提供しています。
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●ウーマンウェルネス研究会supported by Kaoとは
『ウーマンウェルネス研究会supported by Kao』は、現代女性のライフステージごとに異なる様々な心身の不調を解消し、女性が健康で豊かな生活を送り充実した人生を実現することを願って、医師や専門家、企業が集い2014年9月1日に発足いたしました。女性のウェルネス実現のために、公式サイト「ウェルラボ」(http://www.well-lab.jp/)やイベントなどを通じて、女性が知っておきたい健康の基礎知識や不調への対応策など、心身の健康に役立つ情報を発信します。
●ウーマンウェルネス研究会の概要
・発足日:2014年9月1日
・医師・専門家:(50音順)(50音順)
対馬 ルリ子 (産婦人科医、対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長)
小島 美和子 (管理栄養士、有限会社クオリティライフサービス 代表取締役)
川嶋 朗 (統合医療医、東京有明医療大学 保健医療学部鍼灸学科 教授)
中村 格子 (整形外科医、スポーツドクター、医療法人社団BODHI理事長)
福田 千晶 (産業医、内科医・リハビリ医、人間ドック専門医、健康科学アドバイザー)
渡邉 賀子 (漢方専門医、麻布ミューズクリニック名誉院長)
・協賛:花王株式会社、パナソニック株式会社 (あいうえお順)
・Webサイト:ウェルラボ』: http://www.well-lab.jp/ (2014年9月11日OPEN)
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<本件に関するお問い合わせ先>
ウーマンウェルネス研究会 事務局
TEL:03-4570-3167 FAX:03-4580-9128
Email:info@well-lab.jp