地域スポーツ運営組織(Regional Sport Management Organization; RSMO)形成へ 地域のスポーツにかかる資源(人材・財源)を集約し、地域スポーツの環境整備を目指す

笹川スポーツ財団『新たな地域スポーツプラットフォーム形成に向けた実践研究
~スポーツコミッションの分類と地域スポーツ運営組織の形成に向けた検討~』

 笹川スポーツ財団(所在地:東京都港区 理事長:渡邉一利 以下:SSF)は、2018 年度『新たな地域スポーツプラットフォーム形成に向けた実践研究』結果を発表いたしました。
 少子高齢化や人口減少の課題を抱える地方公共団体では、公益的なスポーツ事業を担う人材や財源の確保に苦しんでいるのが現状です。また、複数のスポーツ推進団体が限られた場所や時間を取り合いながら重複した事業を実施しているという問題も見受けられます。
 本研究では、SSF が考える 新たな地域スポーツプラットフォーム(地域スポーツ運営組織:RSMO)の母体組織や、地域内外からの収入により自立的な運営を目指す「ハイブリッド型事業体」としての役割を期待されるスポーツコミッション(SC)の組織形態や事業内容の整理を試み、その実態を把握したうえで、新たな地域スポーツ運営組織の形成に向けた検討を行いました。

※レポートの全文は、SSF ウェブサイトでご覧いただけます。
http://www.ssf.or.jp/report/category2/tabid/1818/Default.aspx

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【ポイント】
・全国に97 の SC が設置されている(2018 年10月現在)。2021 年度末までに170設置が目標。(スポーツ庁)
・多くは、スポーツイベントや大会、合宿、キャンプなどの「開催支援」「誘致」を中心に活動。
・交流人口の増加による地域産業の活性化や雇用の創出など地域経済の発展を目的としている。
・SCの活動範囲と運営主体をそれぞれ二分し、4つの形態に分類した(詳細は後述)。
 A「広域・行政型」/ B「広域・民間型」/ C「地域・行政型」/ D「地域・民間型」
・地域住民のスポーツ参加機会を促進する「インナー政策」とスポーツを活用して地域や経済の活性化を促す「アウター政策」の両方を担う「ハイブリッド型事業体」である地域スポーツ運営組織(RSMO)として、地域スポーツの環境を整備することが求められる。

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■研究担当者コメント
 これまで地域のスポーツ振興は、各地域の体育協会や総合型地域スポーツクラブ、行政等による、地域のスポーツ環境を充実させ住民のスポーツ参加を促す「インナー政策」が中心であったが、各地域におけるスポーツコミッション設立を契機に、地域外との関わりの中で地域スポーツを振興する「アウター政策」の流れが生まれた。

 しかしながら、現在、各組織が個別に活動をしており、団体・事業間の連携が十分に図られていないケースが多い。人口の高齢化や都市部への人口流出の課題を勘案すると、これまでのように各組織が個別に事業を展開しては地域スポーツの推進は立ち行かなくなると考えられる。そこで、「インナー政策」を担う体育協会、総合型クラブ、行政と「アウター政策」を担うスポーツコミッションが集結し、地域スポーツ事業がもたらす収入と域外ビジターの消費活動から得られる収入により自立した運営を行う「ハイブリッド型事業体」という地域スポーツ運営組織(RSMO)として、地域スポーツの環境を整備することが求められる。RSMOが中心となり、地域のスポーツに係るヒト、モノ、カネ、情報を集約し、共同事業を展開することで新たな地域スポーツプラットフォームが形成されるのではないだろうか。


SSFスポーツ政策研究所 研究ユニットメンバー 鈴木貴大 政策オフィサー コメント】

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【SCの4つの類型】
 全国に97あるSCの特徴を分析するにあたり、「活動地域の範囲(※1)」と「運営主体(※2)」により、4象限のいずれかに分類した。




※1 活動の範囲が複数の自治体におよぶ組織=「広域」、単一の自治体内で活動する組織=「地域」
※2 行政機関の一部署として活動している組織=「行政主体」、法人格を有する主体=「民間主体」

■調査の結果、SCは、属する類型によって以下のような傾向を持つことがわかった。
  • A「広域行政型」と B「広域民間型」は、イベント等の「誘致」や「開催支援」を活動の中心としつつ、「セミナー・研修」や「地域産業の活性化」に関する事業を実施する傾向にある。
  • C「地域行政型」は、地域の資源である自然環境やスポーツ施設などを活用した、「誘致」「開催支援」の事業を中心に活動。
  • D「地域民間型」は「住民向け事業」が活動の中心。「人材育成・派遣」や「施設管理」「その他事業」に取り組む組織が多い。
 Dの「地域・民間型」はインナー事業に力点を置いているものの、それ以外のSCは本来の定義通り、アウター事業に重点を置く傾向にある。いずれにしても、アウター事業かインナー事業のどちらかに活動が偏りがちである。一方で、事例研究から、(特非)掛川市体育協会や(特非)出雲スポーツ振興21のように「ハイブリッド型事業体」として先行的に活動する組織もみられた。今後は、そうしたSCがRSMOの母体組織となり、地域スポーツの環境を整備することが求められる。

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【RSMO―地域スポーツ推進をけん引する、新たなプラットフォーム】

地域スポーツ運営組織(Regional Sport Management Organization; RSMO)形成イメージ


  • RSMOにおいては、母体となる複数の組織の「人材」「マーケティング力」「財源」を最大限に活かすとともに、それぞれの長所や得意分野を地域全体の強みとして共有する場とする。これらの要素は、持続可能な事業体を目指す上で不可欠なものである。
  • RSMOは、組織間のコーディネート役となり、地域スポーツの推進に必要な経営資源を集約し、適切に配分する機能をもつ。
  • RSMOの事務局運営者として、「地域スポーツ推進マネージャー」(仮称)を配置する。人材配置の手法として、地方創生人材支援制度(内閣府)における「日本版シティマネジャー派遣制度[1]」「地方創生コンシェルジュ[2]」や、観光庁「観光地域づくりマネージャー[3]」を参考とした人的資源の活用や、民間企業との人材交流も有用である。
  • RSMOは、複合的な事業展開によりプロフィットを産み出す収益事業の実施を通じて自主財源を確保し、その収益を公益的なスポーツサービスに還元する事業体を目指すことで、組織の持続性と発展性を担保する。スポーツイベントや大会の開催、キャンプ合宿誘致などから得られる利益を地域スポーツへ還元し、地域スポーツ推進の環境を整備するスキームをつくる。
[1] 市町村まち・ひと・しごと総合戦略に記載された施策の推進のため、地方創生に積極的に取り組む市町村に対し、国家公務員や大学研究者などを首長の補佐役として派遣する制度。
[2] 「地方版総合戦略」に沿って施策展開を進め、地方創生に取り組む地方公共団体に対し、当該地域に愛着のある国の職員が国の相談窓口を通じて対応・支援を行う制度。
[3] 「観光地域づくりプラットフォーム」が目指すべき方向性について関係者との合意形成を行い、具体的な事業を担う者。観光庁の一定の研修を受けた者が登録され、基本的には民間人から選ばれる。

【笹川スポーツ財団とは】

公益財団法人 笹川スポーツ財団は、「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ分野専門のシンクタンクです。国、自治体のスポーツ政策に対する提言策定や、スポーツに関する研究調査、データの収集・分析・発信を行い、「誰でも・どこでも・いつまでも」スポーツに親しむことができる社会づくりを目指しています。

■公益財団法人 笹川スポーツ財団について

名称  : 公益財団法人 笹川スポーツ財団
代表者 : 理事長 渡邉 一利
所在地 : 〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
設立  : 1991年3月
目的  : スポーツ・フォー・エブリワンの推進
事業内容: ・生涯スポーツ振興のための研究調査
      ・生涯スポーツ振興のための研究支援
      ・生涯スポーツ振興機関との連携事業
      ・生涯スポーツ振興のための広報活動
URL   : http://www.ssf.or.jp/

本件に関するお問合わせ先
この件に関するお問合せ先
笹川スポーツ財団 広報担当:竹下、清水    
TEL:03-6229-5300 info@ssf.or.jp

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組織名
公益財団法人 笹川スポーツ財団
ホームページ
http://www.ssf.or.jp/
代表者
渡邉 一利
上場
非上場
所在地
〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2日本財団ビル3階
連絡先
03-6229-5300

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