高校野球部の休日練習時間、他の運動部の約2倍の長さ ~練習時間に対する“感覚のずれ”の是正を~

中高生の運動部活動状況 分析報告
SSF スポーツライフ・データ 分析レポート 「なぜ、野球部の練習は長いのか?」

「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進する公益財団法人笹川スポーツ財団(所在地:東京都港区 理事長:渡邉一利 以下:SSF)では、本年3月に4~21歳のスポーツライフ関する調査結果、『子ども・青少年のスポーツライフ・データ』を刊行しました。その中で、中学生・高校生の学校運動部活動に関する調査も実施しています。
今回、運動部ごとの活動状況を分析し、中・高生ともに野球部の練習時間が長く、練習時間に対する部員の意識が他の運動部とは異なる、などの分析結果をまとめました。

全国高等学校野球選手権大会が100回目を迎え大きな盛り上がりを見せる一方で、2018年3月にスポーツ庁は「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を発表し、野球部のみならず本格的に部活動改革への指針を示しました。このような中、今回の分析結果から学生野球を維持・発展させていくために、なにが必要か、野球部員の練習時間に対する意識構造をもとに考察し報告いたします。


※なお、本レポートの全文は、SSFウェブサイトでご覧いただけます。
https://www.ssf.or.jp/research/sldata/tabid/1601/Default.aspx

【主な分析結果】

1・中・高ともに、野球部は週当たりの平均活動日数と練習時間が多い(長い)
  特に、高校野球部の休日の練習時間は
7.7時間と長く、他の運動部の約2倍である
→ 詳細:図1

2・野球部員は練習時間の長さに不満が少なく他の運動部員と感覚のずれがある
  是正するには、長時間練習の弊害を認識し時間短縮に努めるなど、指導方法の改善が必要
→ 詳細:表1、図2、図3



■研究担当者コメント

分析の結果、中学校、高校共に野球部は他の運動部よりも活動日数が多く、練習時間が長いことが明らかとなった。また、野球部員は練習時間に対する感覚が他の運動部員と異なることが示唆された。その要因は、厳しい環境での選手経験と、その中で成功体験を重ねることにより、長時間練習が正当化されることにあると推察される。野球部の環境を改善するために、指導者や選手が長時間練習による様々なリスクに関する知識を深め、効率的かつ効果的な練習方法を取り入れることが求められる。
学生野球はひたむきにプレーする姿やドラマチックな試合展開など多くの人を魅了しファンも多い。一方、選手にとって厳しい環境があたり前になっている現状もみられる。少子化が進む中、学生野球を維持、発展させるためにも、今後のありかたを考える必要があるのではないだろうか。

【笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 研究員 鈴木 貴大】

【分析結果のポイント1】
中・高ともに、野球部は週当たりの平均活動日数と練習時間が多い(長い)
特に、高校野球部の休日の練習時間は7.7時間と長く、他の運動部の約2倍である

中学校期と高校期の活動日数・活動時間を分析すると、前述のスポーツ庁が示した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」にある、休養日は週2日・活動時間は平日2時間程度・休日は3時間程度という範囲を大きく超えていることがわかった。

野球部に着目すると、中学生の週当たりの平均活動日数は6.10日(他の運動部5.63日)、平日の1日あたりの平均活動時間は2.43時間(2.22時間)、休日は5.71時間(3.65時間)であり、高校生の平均活動日数は6.57日(5.73日)、平日の平均活動時間は3.43時間(2.58時間)、休日は7.70時間(3.74時間)と、野球部の活動日数・活動時間は平均よりも明らかに多い(長い)。
特に高校期の休日の活動時間は、他の運動部と比較し、7.70時間(他の運動部3.74時間)と約2倍の長さとなっている

図1 野球部と野球以外の運動部の活動日数・時間の比較(学校期別)


【分析結果のポイント2】
野球部員は練習時間の長さに不満が少なく、他の運動部員と“感覚のずれ”が見られる
是正するには、長時間練習の弊害を認識し時間短縮に努めるなど、指導方法の改善が必要

野球部員の部活動に対する悩みや不満を見ると、「遊んだり勉強する時間がない」ことに不満を感じている部員は中学生28.6%・高校生43.5%、「休日が少なすぎる」ことに不満を感じている部員は中学生38.1%・高校生52.2%で、不満を持つ部員は一定数いることが確認できた。

注目すべきは、「練習時間が長すぎる」ことに不満を感じている野球部員は、中学生14.3%・高校生21.7と低いことだ。練習時間は他の運動部よりも明らかに長いにもかかわらず、野球部員はあまり不満を感じていない様子が読み取れる。

表1 野球部員の部活動に対する悩みや不満(学校期別)


ここで、野球部と野球以外の運動部における、練習時間の長さに対する不満の有無と実際の活動時間を比較する。野球部で練習時間の長さに不満がある者の平均活動時間(休日)は8.36時間で、野球以外の運動部における練習時間の長さに不満を感じている者(4.17時間)よりも、4.19時間長いことがわかった。

これに加え、野球部で練習時間の長さに不満を感じていない者の平均活動時間(休日)は6.02時間で、野球以外の運動部で不満を感じている者(4.17時間)よりも1.85時間長かった。平日の活動についても同様の傾向がみられ、野球部員の練習時間の長さに対する感覚は他の運動部員と比較して異なっていること、練習時間に対する“感覚のずれ”が示唆された。

図2 野球部と野球以外の運動部における活動時間の比較(「練習時間が長すぎる」ことに対する不満の有無別)


練習時間に対する“感覚のずれ”の要因はなにか
なぜ感覚のずれが生じるのか。要因と思われる、環境や意識が変化する構造を示した。高校期へ進むにつれ、練習環境は厳しくなり、楽しみ志向や教育志向から勝利志向へと変化する傾向がみえる。そこに、技術の向上や勝利などの成功体験が積み重なり、長時間の練習が正当化されると推察される。これこそが、野球部員の練習時間に対する“感覚のずれ”の大きな要因になっていると考えられる。

また、指導者においても、自身の部員時代の経験に基づき長時間の練習をするケースが多い。現在、高校野球部の監督を務めている者の94.5%が、高校以降に硬式野球の部活動経験があるという結果がある(※「第95回全国高等学校野球選手権記念大会 高校野球実態調査」2013/(公財)日本高等学校野球連盟と朝日新聞社より)。つまり、練習時間に対する“感覚のずれ”が是正されないまま、選手が引退後、指導者になることで、再び同じような野球部が作られるサイクルになっているのではないだろうか。

指導方法全体の改善が今後必要になってくる
高頻度・長時間の練習は、選手のけがやバーンアウトのリスクを高める。長時間練習による弊害についての知識を学び、科学的根拠に基づいた効率的な練習方法を取り入れ、時間短縮の意識を高めるなど、練習方法の改善や意識改革が必要だ。
練習のありかたを見直す。それが、学生野球の維持・発展に寄与するはずだ。

図3 野球部員の練習時間に対する感覚にずれが生じる構造


※本レポート全文
https://www.ssf.or.jp/research/sldata/tabid/1601/Default.aspx

調査概要
【調査名】 12~21歳のスポーツライフに関する調査
【調査対象】 全国の市区町村に在住する12~21歳(3,000名):有効回収数1,636名
・中学校期:野球部(n=42)/ 野球以外の運動部(n=308)
・高校期:野球部(n=23)/ 野球以外の運動部(n=205) を抽出し、再分析した。
【調査期間】 2017年6月24日~7月20日:訪問留置法による質問紙調査
【研究主体】 公益財団法人 笹川スポーツ財団

【笹川スポーツ財団とは】

公益財団法人 笹川スポーツ財団は、「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ分野専門のシンクタンクです。国、自治体のスポーツ政策に対する提言策定や、スポーツに関する研究調査、データの収集・分析・発信を行い、「誰でも・どこでも・いつまでも」スポーツに親しむことができる社会づくりを目指しています。

■公益財団法人 笹川スポーツ財団について

名称  : 公益財団法人 笹川スポーツ財団
代表者 : 理事長 渡邉 一利
所在地 : 〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
設立  : 1991年3月
目的  : スポーツ・フォー・エブリワンの推進
事業内容: ・生涯スポーツ振興のための研究調査
      ・生涯スポーツ振興のための研究支援
      ・生涯スポーツ振興機関との連携事業
      ・生涯スポーツ振興のための広報活動
URL   : http://www.ssf.or.jp/

本件に関するお問合わせ先
この件に関するお問合せ先
笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所:鈴木・武長    
TEL:03-6229-5300 info@ssf.or.jp

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組織名
公益財団法人 笹川スポーツ財団
ホームページ
http://www.ssf.or.jp/
代表者
渡邉 一利
上場
未上場
所在地
〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2日本財団ビル3階
連絡先
03-6229-5300

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